[事故報告]重太郎新道の岩場で滑落。手首を骨折した状態で自力下山。

2020/08/26

2020年 怪我 山行記録 事故 縦走 重太郎新道 体のケア 登山 無雪期

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北アルプスで滑落事故を起こした顛末をここに記す。

こんにちは、膝を怪我した1年後に手首を骨折しました。アラサーがんちゃんです。槍穂高縦走中に滑落事故を起こした件について、自身の戒めとして記録を残します。事故を起こした当日の山行記録は以下を参照ください。



槍穂高縦走の最終日に滑落事故を起こした自分への戒めとして。

事故を起こして怪我したことを公表するのは正直言って恥ずかしいです。恥ずべきことだとさえ思っています。しかし、どんなに注意していても、どんなに万全な体制で挑んだとしても事故を起こす可能性はあります。

大事なのは事故を起こした後にどうするかだと思います。失敗から学ぶというやつですね。思考停止していては自身の成長はあり得ない。アウトプットして次に生かすことが大事だと思います。また、これを読んで少しでも誰かの役にたてば、誰かの意識を変えることができれば、意味があるのかなと。そんな気持ちでこの不自由な右手を動かしここに記します。

事故詳細

日にち:8/14(金)(槍穂高縦走3日目)


午前7時半頃に穂高岳山荘テント場を出発。予定では奥穂高岳でご来光を見るために4時半ごろ出発予定だったが、3日目で疲れていたことと、バスの時間には余裕があることもあってかなりゆっくり出発。


奥穂高岳、前穂高岳登頂後、紀美子平を11時半ごろ出発し、重太郎新道を下山開始。ヘルメットは紀美子平から下山する際に外していた。特に急いでいるペースではなく、ゆっくり下っていた。


12時半ごろ、重太郎新道(標高2600m地点あたり)で事故発生。歩きながら汗を拭いだタイミング(もしくはよそ見をしていた?記憶は曖昧)で、足を踏み外し前側に転倒。


転倒した先が高さ3mほどの岩場となっており、そこを滑り落ちるように転落。転落先の岩場(登山道上)下部にてザックがひっかかったのか停止した。下記写真は転落した岩場を撮影したものである。

下部から撮影、80度ぐらいのほぼ垂直な傾斜

上部の様子

こけたあたりを横から

転落時、嫁は前方を歩いており、後ろから私が降ってくるような形で落ちてきたとのこと。滑り落ちるというより、飛んでいった感じだったようだが。実際私も景色は覚えていないが、体が宙に浮いたような気がする。その瞬間何を考えていたか、何をしようとしていたかは覚えていないし、自身でどうにかしようと意識は無かったと思うが、岩をつかんで止まろうとしていたらしい。反射的なものだろう。

転落直後、息が上がってかなりしんどかった。横になったまま声を出し、肩からザックを下ろしてもらう。呼吸を整えた後、自分で立ち上がり体の状態を嫁に確認してもらう。目立った出血は特に見られず、自力で立ち上がることができ足の動作は問題ないようだ。右ほほを打っていたが痛みや腫れは特に無し。少し痣になっているようだったが、ほとんど目立たなかったのが不思議である。ちなみに右ほほを打ったのは落ちている途中でしっかりと記憶に残っていた。滑落途中の唯一の記憶はこれだろうか。顔面を打って落ちたので、落ちながらにして、あっこれはやばいなと直感していたような気がする。


頭部は打っていないようだった。きっとザックを背負っていたから、打たなかったのだろう。お尻は両側とも打ち身があるようで少し痛かったが歩行には問題ないようだった。痣はできたが。左手は指は稼働するが力を入れると痛みあり。動かすだけなら問題ないが、力を必要とする動作は厳しそうだ。手首も曲げると痛みがある状態。左手に関しては大きな腫れもなく、捻挫だろうと思い特に処置はしなかった。


右手は指は動くが、手首が大きく腫れていたため、持っていた瞬間冷却材を手首にあて、骨折の可能性も考えタオルで硬く縛って固定し、手首を動かさないようにした。この冷却材は薬局で100円ほどで買ったもので、中には液体と顆粒のようなものが入っており、握って中の袋をつぶすことで混ざりあって冷却が始まるというものだ。


冷却材を挟んでタオルで固定


熱中症対策などにも使えるので是非携帯することをお勧めする。今回は1つしか持っていなかったが、複数持っていてもいいかもしれない。少し嵩張るが。ちなみに私が使ったヒヤロンは冷却持続時間は40分ほどのようだ。その他のファーストエイドアイテムは下記を参考にされたし。



さて体の状態だが、意識がしっかりしており視界も問題なく自力歩行できた。現在地からゴール地点である上高地バスターミナルまでの距離から、日没までには十分下山できると判断し、自力下山することとした。


そういえば唯一の紛失物はブラックダイヤモンドのキャップだった。お気に入りだったので、なくしてしまった・・・とブツブツ言っていたら嫁に一喝された。なくなったのが帽子だけでよかったじゃないかと。確かにそうなのだが・・・。ぐぬぬ。


荷物はある程度嫁に持ってもらいザックを軽くした。指は力を入れると痛むので、手が使えずバランスを崩しやすいため念のためヘルメットは装着した。事故発生から下山再開まで約15分であった。


岩場の下りは痛めている手をつかない様に、脚を伸ばし、肘などを駆使し座るようにして慎重に降りた。梯子は腕を中から回しかけるようにして降りた。両手が使えない状態での梯子下りが一番苦労した。登りの岩場が無いのが幸いだった。登りの岩場は手が必須だから・・・。


怪我してからはほぼほぼ休憩なしで下山した。ペース自体はゆっくりなので特に問題なかった。そもそも普段から意識的な休憩はあまりしないし。


下山再開から上高地バスターミナルまでは、通常だと3時間ほどのコースを4時間弱かけて16時半ごろに到着した。バスターミナルから駐車場に帰り、手が使えないので体を拭いたり、着替えをしたり全部嫁にやってもらった。もちろん大阪までの運転はできないので全部嫁にやってもらった。感謝と申し訳なさの塊になった。


下山後の病院と手術

家に着いたのは日付が変わったころであった。それまでに大阪府緊急医療センターに電話し、翌日対応できる病院を調べておいた。翌日15日(土)に病院に行きレントゲンを撮った。ワンチャン捻挫だけで済まないかなーと思ったが、見事に右手首が折れていた(橈骨遠位端骨折)。腕の骨折の専門の医師がいる病院を紹介してもらい、そのまま移動。別の病院でCTを撮った。その結果が出るのが翌々日の17日(月)で、その際に手術するか、ギプス固定にするか決めるとのことだった。


術前の状態

17日(月)に病院に行き、医師と相談し、ギプスをしなくていいことと(夏は特に暑いし)、なるべく元の機能を取り戻すことのできる(手術後即リハビリ可能)手術をすることにした。手術は手首にチタンプレートを入れて骨を固定する方法だ。チタンプレート自体は1年後に摘出する予定とのこと。手術日は22日(土)になり、日帰りですることとなった。


恐らく初めての点滴、わくわくしていた

術後で麻酔が効いている状態


22日(土)に手術を行い、無事チタンプレートを埋め込まれた。手術中にリアルタイムにレントゲンを見ていたがなかなか面白かった。手術室は静かなのかと思っていたがBGMがかかっていた。どうやら執刀医の好きな曲とかをかけるらしい。手術は伝達麻酔をして15分ほどで始まった。そして1時間ほどで終わった。術中の痛みは無かったが、ドリルでネジどめしている振動が伝わってきたりと、なかなか面白かった。後はリハビリを行い元の状態に戻すだけだな。9月の連休にはジャンダルム~西穂高をやろうと思っていたが無理そうだ・・・。仕方あるまい。


術後。普段は包帯を巻いているがリハビリの時は外している。ギプス固定しないのである程度動かせる。

事故の対策

ざっくり原因を考察し事故の対策を書いておこうと思う。


歩行しながらの別作業を控える。特に他のことに注意がいく動作や、視界を遮る可能性のある動作は立ち止まってするように心がける。といってもやはり汗を拭ったり、写真を撮ったり、補給をしながら歩きがちである。出来るだけ止まってするようにしたいが、ロードバイクと同じようにながら運転をしがちだ。


今回、直接的な要因ではないが、時間に余裕を持つことも大切だろう。時間に余裕がないと急いでしまい行動自体に余裕がなくなるし、注意散漫にもなる。また、何かあった際に日没までの時間が短いとすべてにおいて余裕がなくなる。日が落ちてから行動するとそれだけであらゆるリスクが高まるからだ。基本的に当たり前のことしか書いていないが、おおよそそんなとこだろう。


また、事故した際のケアの部分になるが、必要に応じて保険に入っておくのも重要だろう。私の場合、入っている生命保険の手術特約や、所属山岳会経由で入っている遭難対策基金の通院保険を使えるためある程度医療費を賄うことができた。今回はヘリでの捜索や救助等は行われていないが、自力下山できない場合そのあたりの費用が掛かる場合がある。しかし、何の保険にも入っていないと数十万円といった高額の費用がかかるので、現状何も対策していない方は1day保険などもあるので自分の山行形態にあったものを検討していただきたいと思う。さらに、その月にかかった医療費が高額な場合は高額医療費制度を使えるので調べるとよいだろう。年間で10万円(受け取った保険金額を引く)以上の医療費がかかった場合は医療費控除も使いたい。

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以上、ここまで読んでいただきありがとうございました一事故の対処例として、何らかの参考になれば幸いです。みなさんも事故には十分お気を付けください。

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