登山家(?)を題材にした、日本社会についての本を読んで。
山をやってる人であれば、知ってる人も少なくはないだろう、栗城 史多(くりき かずのぶ)氏について書かれた書籍、デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場が11月26日に発売された。
一部SNSで話題になっていたので、私も早速購入し読んでみたので、本の内容について紹介し、少し感想を述べたいが、栗城氏のファンの方にとっては不快な内容になっているかもしれないので、ここから先は読まない方がいいかもしれない。ちなみにこの本、山登りに関する本ではない。本質としては日本社会について書かれたノンフィクション本だと思うといいだろう。
栗城史多と本の内容、そして感想
<栗城史多とは>
「冒険の共有」をテーマに全国で講演活動を行いながら、年に1、2回ヒマラヤ地域で「単独無酸素」を標榜して高所登山を行っていた。エベレストには、頂上からのインターネット生中継を掲げ、2009年にチベット側、2010年と2011年にネパール側から挑んだが、8,000mに達することが出来ず敗退。
2012年に西稜ルートから4度目の挑戦をするも強風により敗退。この時に受傷した凍傷により、のちに右手親指以外の指9本を第二関節まで切断。2015年の5度目、2016年6度目、2017年7度目のエベレスト登山も敗退した。
2018年5月に8度目となるエベレスト登山を敢行したが、途中で体調を崩して登頂を断念し、8連敗を喫した矢先の同月21日にキャンプ3から下山中に滑落死した。35歳没。
彼に感銘を受ける人も少なくはないと思う。私自身も彼の考え方に(ごく一部だが)共感を覚えることもあったかと思う。例えば、彼の著書である『一歩を越える勇気』では「自分の好きなことをやりたい」「夢をかなえたい」といった、誰もが持つ願いをかなえるためのヒントがつまっており、そこに共感する人、タメになったと感じる人は大勢いるだろう。しかし、彼の登山活動や一連の騒動までを含めて知った時、彼に対してどういう感情を抱くだろうか。どんな人でもそうだが、ファン(信者)の数だけアンチがいるのもまた事実である。私はどちらでもなく、登山に関連する人物なので興味の対象だったという感じだ。アンチではないが欺瞞の人だという認識ではある。
〇登山活動について
栗城はその登山活動において「日本人初となる世界七大陸最高峰の単独無酸素登頂に挑戦している」との文言をマスコミ向けに使用しており、全てのヒマラヤ遠征でも「単独無酸素」を標榜していた。 栗城の登山では、1つ下のキャンプにシェルパのサポート隊が酸素ボンベを用意して待機しており、いざというときは酸素ボンベを持って救助に行ける体制になっている。最後のエベレストへの「単独無酸素」アタックとなった2018年5月、本人の死亡を伝えるThe Himalayan Timesの速報において、シェルパ4人が同行していた旨が記載されている。
以上の通り、彼の登山活動について、登山界隈の著名人からは否定的なコメントが多かったように思う。そもそも彼を登山家とは認めていない、むしろ否定している人も多かったように思う。
デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場
冒頭でも述べたように、エベレスト劇場とあるが、エベレストでの悲惨な事故を検証するとかそういった内容ではない。どちらかというと栗城史多という人物の人生に起きた事故そのものの検証、解説である。
登山に興味がありSNSをしている人なら知らない人も多くはない、栗城氏。彼がエベレストでの遭難事故によって亡くなったのは記憶に新しい。しかし、なぜそのような事故が起きてしまったのか、なぜ彼はそのような目にあってしまったのか実際のところはわからない。彼の周りの人や様々な環境、取り巻きについては色々噂が流れ、多くの情報が錯綜していたように思う。
実際、あの事故から2年が経った今も、事故(遭難だけでなくそこに至るまでの過程も事故といえるであろう)や全貌、真実というものはボヤけたままで全く見えてこなかった。
そんな中で、このモヤモヤを解消すべく?発売された本がデス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場である。上記で私が述べたモヤモヤを解消するような内容となっている。
<感想>
私自身、栗城氏のこれまでの振る舞いや登山活動について、どうこう意見するつもりもないし、誰が悪いとか良いとか、こうあるべきだったとかそういう感情は一切ない。一人の登山を趣味としている私から見て(登山に関する本だという認識で読んで)、この本はまぁまぁ面白かったが(我々の登山活動には一切役立たないと思うが)、後味は決して良くない。
栗城氏を理解するために読む本ではないが、この本を読んだからといって栗城氏を否定するといったスタンスになるのも違うな。という感想を残したいと思う。
ちなみに、登山に興味がない人が読んでもあまり面白くないかもしれないが、日本社会の縮図だと思って読めば、本の内容の捉え方が変わるかもしれないと感じた。言い方が悪いかもしれないが、SNS全盛期らしい事件とその解説本といってもよいだろう。
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