[冬季アルパイン]赤岳主稜登攀・厳冬期の八ヶ岳でクライミング

2021/01/27

2021年 アルパイン クライミング テント泊山行 山行記録 雪山 登山 八ヶ岳連峰

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八ヶ岳で雪山バリエーション入門

1月22日は結婚記念日。ということで仕事を休み3連休を錬成。折角遠出するならいろいろ楽しみたいということで八ヶ岳、初の冬季登攀(アルパインクライミング)へGO。今回は赤岳西壁主稜と横岳西壁石尊稜を登攀することに。


この二つのルートは八ヶ岳の冬期バリエーションでは比較的やさしい入門ル-トとなっており、それぞれ1級(ピッチグレードはⅢ〜Ⅳ)程度の難易度のようです(新版 冬期クライミングより)。そのおかげでどちらのルートも休日は比較的混むようです。八ヶ岳へ訪れたのは1年ぶり。前回は2020年の1月12日~13日で天気はイマイチでしたが、果たして今回は・・・?



厳冬期・岩と雪の赤岳西壁主稜を攻めろ

山行概要

日程:2021年1月22日~2021年1月24日

山行形態:テント泊、冬季登攀

メンバー:がんちゃん、妻


<1日目:美濃戸口~行者小屋>

距離:9.04km、910mD+

山行時間:4時間26分


序盤は雨、途中から雪。兎に角荷物が重かった。なぜなのか。なぜなのか。30kg近い荷物を背負いただひたすらこの日のキャンプ地、行者小屋を南沢から目指す。空はどんよりしており山の形は何も見えなかった。


この辺りから雨は雪へと変わるだろうサイレンナイト

体力的な意味では核心の一日であった。気温はそれほど低くなく、風もなく雪もそれほど深くはなかったのが唯一の救いだろうか。


荷物が重くて萎える

小屋に着いたら早速テントを張る。他にテントは2張しかなかった。金曜であることとこの天気だ。そんなもんだろう。トイレが近い小屋のほぼ目の前に貼ることにした。小屋は開いていないとはいえトイレがあるのは非常にありがたい。便座はキンキンに冷えているが。


晩御飯はきりたんぽ鍋にした。ちなみに持ってこようと思っていたササミを家に忘れてしまったのでコンビニでサラダチキン(プレーン)を調達したが、これが意外といい感じだった。タンパク質は正義。



きりたんぽ鍋


バーナーはOD缶とガソリンの2つを持ってきていたがガソリンの方が調子が悪く、いろいろメンテしてみたが結局使えなかった。水作りはガソリンに頼ろうと思い、OD缶は250を1つしか持って来ていなかったので出鼻をくじかれた。まぁ水に関してはテン場の端っこで沢水が流れているので困ることはないので何とかなるだろう。調理に重きを置くことにした。


<2日目:赤岳主稜/登攀難易度1級>

距離:3.1km、711mD+

山行時間:9時間33分

天候:マイナス4度、風は弱、降雪あり



S行者小屋08:3108:43阿弥陀岳分岐08:4609:54赤岳主稜チョックストーン12:4715:10赤岳頂上山荘16:4316:47赤岳16:5216:54竜頭峰分岐16:5516:56赤岳17:0117:01竜頭峰分岐17:0917:12キレット分岐17:2417:28文三郎尾根分岐17:2917:33赤岳主稜チョックストーン17:3517:55阿弥陀岳分岐17:5618:04行者小屋18:04ゴール地点G


赤岳の西壁中央、北峰に繋がる岩稜が主稜である。メインとなる岩場は上中下と3か所あり、それぞれⅢ~Ⅳ級程度の岩登りとなる。人気ルートであり、支点も充実しているが冬季は埋まってることも多い。


予定通り5時に起床するが安定の二度寝。まぁこの天気だし他にPTもいないだろうから渋滞することもないだろう。ということで8時半スタートとなった。朝食はカレーメシにした。ゴミが出ないようにカップは捨てて袋に入れて持ってきたが、結局シェラカップが汚れた。クッキングシートを持って来ておくべきだった。尚、テントには一晩で雪壁が出来ていた。


雪に埋もれるマイハウス

カレーメシはカロリーがそこそこあってうまい


1日目の疲労が若干残っているのか、歩き始めは非常にしんどかった。急いでも仕方ないので体が温まるまでゆっくりじっくり歩いていく。本格的な登りに入る頃には体も暖かくなってきたがやはりしんどかった。


赤岳西壁主稜の取り付きは文三郎尾根の梯子を登り切ったあたりから50mほどトラバースする。事前にトラバースポイントを予習していたので迷うことはなかった。また、遠目からでも取りつき地点にある長いお助けスリングがよく見えた。降雪はずっとあったがそれほど酷くないし、風も弱くまぁ許容範囲だろう。


文三郎尾根の階段


トラバースポイント、左上に1P取り付きが見える

取り付きへのトラバースポイントはかなり急な雪面であり、雪崩スポットでもある。確かに雪崩やすそうな地形だったが雪が少なかったのでそれほど心配はなかった。一方で岩の露出が多くそれはそれで気を使った。ある意味最初の核心である。さて1P目の取り付きまで1時間半ほどかかったが準備し、いざ参る。


雪崩ポイントだが雪が少なくこの日は大丈夫そうである


1P目の取り付きで準備をする


<1P目、30m Ⅳ>

チムニーチョックストーンから凹角:がんちゃんリード


聞いていた通り取り付き最初のチョックストーンが核心だった。難儀しつつもアックスを効かせステミングで越えていく。なかなかに辛かった。左側に掛かっているお助けスリングは無視した。チョックストーンの下は半分ほど雪で埋まっていたが、掘り出せば通れるぐらいだろうとこの時確認しておいた。これが後々・・・。



1P目の核心、チョックストーン下部は少し隙間がある


チョックストーン上部でとりあえずランナーを取るが、イマイチだ。全体的にランナーが取りにくかった。カムも持ってたし使えばよかったなぁと今更になって思う。凹角を登り、右上しながらトラバースし、支点を取る。


チムニー上部より

さて、妻が登る番だがなかなか上がってこない。最初のチョックストーンを越えられないと無線で一報が入った。おいおいマジか。左側のお助けスリングを使ってみてと指示するがどうやらそれもダメそうである。さてどうしたものか。


これは仕方ないなと思い、岩の下が雪で完全に埋まっていなかったことはわかっていたので、岩の下の雪を掘って下側を潜ってくるように指示した。これでなんとか進むことができてよかったが、若干不機嫌になったようだ(真顔)。


<2P目、20m Ⅲ>

凹状の岩場:妻リード


左側のカンテ状を登り、フェースを登る。フェースは左巻きできそうだったが、妻はそのまま登り右上。全体的に岩が露出してるところが多くフェース上は高度感があった。



2P目終了点


<3P目:100m>

ミックスの雪稜、階段状の岩場:コンテ


岩雪ミックスの雪稜をコンテで進む。若干リッジになっている箇所もあるため慎重に進む。30mほど進んだところで階段状になっている岩場があった。トポにある”階段状の岩場20mⅢ”だろうか。他のトポだとグレードはついていなかった。特に難しそうではなかったのでそのままコンテで越えた。


コンテで進んでいく

階段状の岩場をコンテで


階段状の岩場上部からさらに50mほど進んでいくと残置支点があった。書籍にあるフェース~クラック40mⅢの取り付きだろうか・・・いや、違うか?ぱっと見、容易には上がれそうになかったのでスルーしてそのまま右上に壁沿いをトラバースしていった。このトラバースがなかなかに斜度が立っていたのでスリリングだった。20~30mほど進むと残置支点があった。少し安心した。


<4P目:40m Ⅲ>

岩のステップ、凹角:がんちゃんリード


最初の岩のステップを越え凹角へ。凹角を越えるのが一番大変であった。。感覚的にⅢぐらいだろうか。合計40mほどロープを延ばしたところで、岩にかけてる残置。ここで支点を取る。



しかし、トラブル発生。40mも離れていると、大声でコールしても風にかき消されてしまい声が届かない。そういう時のためにトランシーバーを持っていたが、どうやら調子が悪くこちらの声があまり聞こえていないようだ。電源を切ったりし何度も試して何とか意思疎通ができたがかなり時間を食ってしまった。低音のせいだろうか。あちらの声はよく聞こえていたのだが。


4P目終了点


<5P目:30m>

雪稜:フリー


4P目が最後の登りだと思っていた。実際この先は確保なしで行けそうだ。ロープをほどきフリーで登って行く。しかしどうも北峰手前の稜線に出れそうにない。そして岩場にぶち当たった。周りを見渡すが残置もない。はてさて、これはどういうことだろうか。


フリーで登る


<6P目:20m Ⅳ>

チムニー:がんちゃんリード


しばらく周りを観察したが目の前を越えていくしかなさそうだ。なんとか支点を構築し登ることに。右側にあったチムニー状のとこになんとか入りこみ登っていくが、なかなかランナーを取ることが出来ない。第2の核心といった感じで大変だった。本当に大変だったんだから。


この先はフリーでも大丈夫だろうと判断し、ロープを20mほど伸ばしたところで、適当な岩にスリングをかけ支点を構築した。


<7P目:30m>

雪稜:フリー


フリーで30mほど進み、北峰(赤岳頂上山荘)手前の一般ルートに入ることが出来た。ここまでかなり時間を食ってしまい、予定では取り付きから4時間ほどで抜けられると思っていたが、結局7時間弱ほどかかってしまった。


山荘が見えた時は安堵した
ついに赤岳山頂へ


<赤岳登頂>

そのまま赤岳山頂2899mへ登頂し、文三郎尾根で下山した。登攀ルートは全体的に氷はなく雪が少なめで岩の露出が多かったように思う。雪がついていても薄く、アイゼン、アイスバイルのかかりは非常に悪く、手で払いホールドスタンスを見つけ、岩を頼りに登っていったため、入門ルートとはいえ全体的にハードな登攀となった。また、いくつかあるであろう残置ピトンは1か所しか見当たらなかったが、見つけた時はかなり安堵するものだった。


この日、主稜を登ったのはどうやら私たちだけのようだった。視界は若干不明瞭ではあったが、ルーファイ自体は自然的なルートのためそれほど難しくはなかった。ただ初見だとトポと照らし合わせるのが少し困難に思えた(1P目の取りつきは明瞭だが)。


青空はなかったものの、適度な難易度と景色、何よりも岩と雪のクライミングの楽しさを実感した一日であり、無事に登ることが出来てよかった。妻は1P目でかなりブーブー言っていたが、登頂してみれば機嫌を取り戻し、達成感もあったようで楽しめたようでよかった。


赤岳西壁主稜、登頂。


天候自体は晴れることがなく、雪が降り続いていたが、風は弱かったのが不幸中の幸いだった。ビレイ中も特にダウンを着こむほどでもない寒さで耐える事が出来たがやっぱり寒いものは寒い。というか寒い。


文三郎尾根をそそくさと下ったが、途中暗くなってきたのでヘッドライトを頼りにテント場へ戻ってきた。そこには変わり果てたテントの姿が・・・。


ブラックダイヤモンド、ハイライト。


晩御飯は大量のマカロニパスタなどを食べて眠りについた。体を温めるためハクキンカイロを直で首元に置いたら低温やけどをしてしまった。アホか。


もちろん早ゆでタイプ


<3日目:石尊稜と思わせておいて・・・>

距離:6.9km

山行時間:3時間18分


この日の予定は横岳の西壁、石尊稜を登る予定だった。予定通り5時に起きたが、ずっと雪が降っており、取り付きまでは膝下ぐらいのラッセルは確実だろう。今の疲労感とかを考えると気分が乗らない。実際、2日目に寝る前からなんとなくやる気がないというか疲れていた。というわけで予定通り(いや、予定とは違うが)2度寝し、下山することにした。


ゆっくり起きて朝ごはんは善哉と煮卵。出来るだけ荷物を軽くしたいので行動食もむしゃむしゃしておいたが効果があったかは不明である。荷物を片付け下山準備。片付けている時に数PTが行者小屋でワイワイしていた。決して晴れてはいないが、横岳や硫黄岳などを望むことができた。そういえばこの時に小屋でクライミング装備を準備していたPTが実はツイッターのフォロワーさんだと後で知った。



そんなこんなで3日目は気楽に下山したが、この日に赤岳主稜をアタックしたフォロワーさんは中々に大変だったようだ。


反省会

・食料持ちすぎ
予備食糧、行動食を持ってきすぎていた。予備があるのはいいのだがそれにしても持ちすぎで結構余ってしまった。つまり嵩張る&重たいのだ。いつものことではあるのだが、もう少し必要量をちゃんと計算し、食糧計画を立てた方がいいなと感じた。

・ダブルザックの積載方法
今回はクライミング道具を持って行くためにダブルザック(60+38リットル)としたのだが、上に付ける小さい方のザックを背面側に付けてしまった。そのため後ろ側に引っ張られ肩がかなり疲れた。これは上下方向に積載すべきだった。実際帰りの途中からザックの雨蓋の上に横向きに付けたらかなり良くなった。また、サブザックの方に軽い物を入れた方が安定した。



以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。


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