[アルパイン]地震で揺れる明神岳東稜~主稜 2021/9/19-20

2021/09/22

2021年 アルパイン クライミング テント泊山行 山行記録 登山 穂高連峰 北アルプス 無雪期

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揺れる大地、押し寄せる岩雪崩

2021年9月19日午後5時20分ごろ、岐阜・飛騨地方を震源とする地震が発生した。テントでシュラフに包まり、横になっていた我々は大きな揺れと轟音に驚き跳び起きた。


明神岳バットレス

明神岳東稜~主稜登攀

山行概要

日程:2021年9月19~20日

山行形態:テント泊

メンバー:がんちゃん、佐藤さん、林さん

主な装備:クライミングシューズ、50mシングルx1、カム#0.5~#3x1セット、2テンx1、1テンx1、水約4.4リットル(ハイドレ水2リットル、ナルゲン1リットル、コーラ700ml×2)



<1日目>

あかんだなから上高地へ。始発に乗りたかったがかなり人が並んでいる。3台ほどスルーしてやっと乗れた。上高地には6時過ぎに着いただろうか。沢渡からアクセスする佐藤さんと合流し、水を汲んで出発。

明神橋から望む明神岳

明神橋を渡りまずは信州大学の旧研究施設の横を通り丸太を渡る。笹林を越えてからは中下宮川谷へ。踏み後は明瞭で所々テープやマークもあった。


と言いつつ、谷を登りすぎてしまいガレ場をちょっとトラバースし本来のルートへ。1944mのピークを越えたあたりで右へ右へと行った方がいいだろう。この前後で先行PT(4名)と抜きつ抜かれつをし、最終的には我々が先行することとなった。

ガレガレ

長七の頭に向かって横切り、左手に遭難の碑が二つあるところを超えると間もなくして瓢箪池に辿り着いた。ひょうたん池では多くのオタマジャクシが。と思ったらクロサンショウウオらしい。めちゃくちゃいた。池の水は飲めそうにない。

山を愛せるだろうか

ひょうたん池

クロサンショウウオ

ひょうたん池から先は嫌な藪ハイマツ。そして第1階段と呼ばれる岩場へ。ほぼ急斜面の草付きといった感じだが、念のためロープを出し私がリードで登り適当なところでビレイをする。その後はまたハイマツと戦うことになるのだ。

ロケーションはいい

ハイマツはうんざりだ

事前情報で第1階段は3ピッチほどとなっていたが結局1ピッチしかロープを出さなかった。おそらく最初の1ピッチ目は右側に巻いてしまったのだろうか。後続PTは我々が巻いたところを登っていたようだ。

とにかく藪の岩尾根といった感じで、ひたすらに藪をかき分け、急登でハイマツを掴み、油まみれになった手を見てそう思った。雪の無い季節にはもう行きたくない。

しばらく進むと東稜の頭に辿り着き、目の前に明神岳バットレスがそびえ立った。眼下にはビバーク地のラクダのコル。ああ、今日はあの狭い所がビバーク地だなと思いつつ、先行PT(男女の二人)を捉える。なんとかテントも2つ張れそうだ。後続PTは。。。どうだろうな。。。(結局微妙な位置ではあるがツェルトをいい具合に張れていた)

そんなこんなで食事をし、だらだらしてシュラフに包まり横になっていた。突然強い揺れを感じ、轟音が響いた。地震だ。飛び起きてひとまずテントから裸足で飛び出した。穂高方面に目をやると崩れる岩が少し見えた。そしてすごい落石の音。岩雪崩、立ち込める砂煙。

前穂高と砂煙

ラクダのコルは位置的に落石の心配は無いが、狭いテント場だ、崩れて落ちないか心配であった。幸い明神岳は大きな崩落はなさそうだったが、明日どうしようという不安に駆られる。もと来た道を戻る事も考えたが、なかなかの急斜面だしいい感じの懸垂支点を確実に取れそうな感じでもなかったことを思い出す。であれば、予定通りまずは明神岳まで登りそこから考える方が無難だろうということになった。(穂高、重太郎方面はかなり怪しい)

ひとまず眠りについたが何度か小さい揺れや大きい揺れで目が覚めた。日が変わるころには収まったようだ。シュラフ#5は少し寒かった。

<2日目>

予定通り、明神岳へ登ることにした。ベテランそうな4人PT(2人x2)に先行してもらい登りを見させてもらう。6時過ぎごろ出発。男女PTは私たちの後に出発した。いくつかのピッチでちょっともたつき待たせてしまって申し訳なかった。ルートは凡そ以下のように登った(はず)。


赤登攀、青クライムダウン、黄色フリー


1ピッチ目:先行PTは核心であろう若干ハングしている直上ルートをアプローチシューズで登っていた。私はクライミングシューズに履き替え挑んでみたが、中々に手が悪く苦戦した(残置カム2つあり)。核心部(昨年岩が剥がれたようだ)はかなり脆くちょっと無理しないと越えられそうになかった。流石にここで冒険するわけにもいかず、セカンドはアッセンダーで登るということも考えあらかじめ検討していた左側の草付きトラバースで巻くことにした。


1ピッチ目、核心部を登る先行PT


と言ってもそれなりに上ったところをある程度クライムダウンしないといけないため、中々に大変であった。草付きを登りピッチを切り、そこからクラックのあるバットレスまではフリーで。


先行PT、私はここを越えられなかった


2ピッチ目:ここも私がリードした。ピトンがかなりの数打たれており、それほど傾斜もないため比較的容易に登ることができた。上半分は結構屈曲していることと、フリーでもいけそうということで中間部のちょうどいいテラスでピッチを切る。そこから山頂直下まで歩いた。


2ピッチ目取り付き、中央右寄りのクラック沿いを登る


2ピッチ目中間部より


3ピッチ目:ここが最終ピッチとは把握していなかったが佐藤さんにリードしてもらう。通常はバットレスを登ったあと、左稜線から上がるようだが、我々は右側のガレガレのルンゼ?より登った。以前の地震でこのルンゼは結構崩落しているようだった。結局ランナーを取ることなく山頂までたどり着いたが、浮石や直ぐに剥がれる岩がかなり多く慎重に登る必要があった。


ガレガレルンゼ


明神岳山頂より

明神岳山頂

明神岳山頂から2峰方面へ下り、2峰を登る。2峰への登りは簡単そうだったので、後続PTをなるべく待たせないようにしたい。まずは1ピッチ目、ここは佐藤さんリード、私がセカンドで一気に行って、林さんを引き上げた。2ピッチ目はフィックスロープが垂れ下がっていた。佐藤さんにリードしてもらったが難なくいけそうだったので私はフリーで上がり、林さんをムンターで引き上げる。


そこから先は特筆することはない。基本的には巻きまくって下山を急ぐ。5峰も結局巻いてしまったため、古びたピッケルを見ることはなかった。


5峰は頂上直下を右に巻く


岳沢への下降路は踏み後が明瞭でテープも多々あり。基本的に迷うことはないと思う。ちょっとでも踏み後が薄いなと思ったら立ち止まって振り返ればよし。ただ、結構急斜面であったり、ズルズルな場所も多いので嫌な下降路だと思った。


そうこうして2日目は9時間半ほどで上高地へと着いた。10時間ほどの予定だったので、普段の自分と比べてそれなりに休憩したつもりではあったがなかなかにいいペースで進めてよかったと思う。今回は1本のロープで3人で登るという事と、メンバーの力量や疲れ具合、ルートの状況は前後PTの様子など考えることが多くあったため中々(脳が)疲れたがいい経験になった。結局水は岳沢合流前に尽きたが、上高地バスターミナルまで耐えることが出来た(テント場で林さんに水を二口ほどもらったが)。


以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。

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