冬季立山継続登攀への誘い
アルペンルートが冬季閉鎖になる前に立山に行っておこう。そうだな、龍王岳東尾根(以下、龍王東尾根)はまだ登ったことがないなと思い友人を誘う。しかし4連休だし、それだけってのもちょっともったいない気がする。どこか他に登れるところはないだろうかと地図を眺める。
色々調べたところ、富士ノ折立の東面に丸山中央山稜(丸山尾根?以下、丸山中央)と呼ばれる場所があり、マイナーではあるものの登攀対象となっているようだ。ただ、ここだけを目的に登る人はあまりいないようでトポを見つけることも出来なかった。いうなればマイナー、人気がないというわけだ(ケンさんがクラシックルートと言っていたので昔はそれなりに登られていたのかな?)。なおかつ雪の季節は黒部側からのアプローチはあるが(これは割と記録が多いようだ)、雷鳥沢側からアプローチしている記録は(ネットでは)見つからなかった。
一応日程としては4日あるが、3日でやれることをやろう。1日は予備だ。そうなると別日でやるか継続登攀するかだが、それぞれ単発でやるには短い気がする。となると継続登攀となる。私が調べた限りでは丸山中央と龍王東尾根を継続登攀している記録はなかった(そもそもこの継続登攀に面白さとかそういうのはなさそうなので誰もやっていないのだと思う)。ということはこれを達成できればある意味初登となるわけで(言いたいだけ)、しかも冬季となればこれは面白そうだ(ネタ的に)。登攀価値は低いかもしれないがきっと楽しいはずだ。
ついでに、さっきも書いたように雷鳥沢側からのアプローチも貴重なはずだ。うん、よしこれをやろう、ということとなった。(検討段階では色々あったが端折ります)
富士ノ折立~龍王岳継続登攀記録
山行概要
日程:2021年11月20日~11月22日、テント泊
メンバー:がんちゃん、佐藤さん
1日目:室堂から雷鳥沢キャンプ場へ
この日は室堂から雷鳥沢キャンプ場まで。特に急ぐこともないので大阪からは始発の特急サンダーバードと新幹線を乗り継ぎ富山まで。そこから電鉄富山で立山駅までムーブ。天気が良く、スキーヤーがたくさんいた。
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ええ天気 |
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みくりが池が氷結し始めていた
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前日から金の猿のタロウ君がBC目当てに立山入りしているとのことで、キャンプ場でお話させて頂いた。謎の無茶ぶりにも答えてくれる好青年だった。来年から登山ガイドになるようだ。
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我々のBC |
夜は鍋。食担は私。とりあえずのキムチ鍋。意外と腹にたまり用意していたシメには手が出なかった。とにかく汚く無理やりにパッキングされた30㎏強の荷物が辛く、むしゃくしゃしたのでビールを飲んで就寝した。帰りは食料がなくなる分、きっと綺麗にパッキング出来て楽だろう。。。と思いながら眠りについた。
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冬はやっぱり鍋 |
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プレモル |
2日目:立山継続登攀詳細
<富士ノ折立・丸山中央山稜>
4時出発のつもりで2時起床、昨晩の鍋の残り汁に米を入れて雑炊に。眠い目をこすりながら準備を進めたが、何だかんだ出発は4時45分となった。相変わらずではあるがこれは良くない。準備時間の精度を上げていく必要があると感じた。
アプローチは雷鳥沢キャンプ場から大走を登り、富士ノ折立と真砂岳のコル部にある一番標高の低い箇所から内蔵助カールへ下降し、トラバースして丸山中央山稜へ取り付こうという計画である。大走はトレースがあり先行者も見える。トレースを外すと膝下ぐらいまでのラッセルとなるのでありがたくトレースを使わせてもらうが、佐藤さんのペースが思うように上がらない。かなりしんどそうだ。
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振り返ると劔が。月明りで明るい。
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そういえばガチャもロープも持たせてしまっていたなとふと思いガチャを私が持つことに。最初からそうしておけよと思っていたかもしれないがまぁいいだろう。これで大丈夫だろうと思ったのもつかの間、やっぱりペースが上がらないようだ。私は全く息が上がっておらずかなりゆっくりペースに感じるので、このままではまずいなと思い「大丈夫ですか?」と声をかける。なぜか「昨日の疲労が・・・」などと言っているが、昨日は45分ほど室堂から下っただけなので「疲労もクソモあるか!」と思いつつも、よろしくない状況なのでロープも私が持つことにした。
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大走 |
それでもしんどいようではあったが先ほどよりはペースアップできただろうか。ひとまず時間を気にしながら後ろから煽っていく。富士ノ折立山頂に着くのが13時を過ぎるようであれば撤退しようと心に決める。丸山中央の登攀時間は長くて3時間ぐらいを想定しておいたので、取り付きには10時までには着きたいところだ。コル部に着くころには、しんどいのが多少マシになったようであった。
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内蔵助カールと富士ノ折立丸山中央から上がる太陽
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予定通り下降ポイントのコルに到着。ここ数日は降雪もなく、雪面を確認した感じでは雪崩のリスクも少なそうである。ちょっと休憩した後、どうやってトラバースしていくかラインを見極める。当初の予定では内蔵助カールへの登山道(ボッカ道)沿いに東に標高差140mほど下っていき、標高2650m付近からトラバースしていくつもりだったが、カールを50mほど下ってそのまま一気にトラバースした方が良さそうと判断した。方針は固まったのでいざ下降。南東方面に進路を取りながら、目の前ですぐ頭を出していた岩の左側を通りそこからトラバースして丸山中央へと向かう。
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岩を横切ってトラバース
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コル部から見ると中々に急斜面のように見えるが、いざトラバースしてみると恐怖感は特に無くサクサク行けそうだ。多少の斜度はあるものの基本的には足場はしっかりしていた。
しかし油断は禁物、強く蹴り込まないと不安定な箇所が時折あり、うっかり足を滑らせてしまった。すぐさまバイルを斜面に突き刺し滑落停止。感覚的に2m程度は流されただろうか。それほど急斜面でなかったことと、しっかりバイルが雪面に効いたのが運が良かったがそもそも転けないようにしなければならない。今回の山行の反省ポイントとなった。
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この斜面で滑落。 |
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トラバースしてきた内蔵助カールを振り返る
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気を取り直して注意しながら進んで行く。一つ大きな岩を東側から越えると2860m付近で丸山中央山稜の稜線に乗り上げ取り付きポイントへと到着。稜線上からは後立山連峰を見渡せ、眼下には黒部湖も見ることができ私にとっては新鮮であった。しばらく休憩し9時34分、登攀開始とする。
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取り付きは目の前 |
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全貌 |
丸山中央は若干脆い岩もあるが、割としっかりとしたザラザラとした岩質に所々雪が乗っかっていた。グレード的にはⅡ~Ⅲ級に感じ、いくつか古いハーケンが残っているところもあったが信用ならないので一切使う事なくフリーで行けるところを進んで行った。
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ここから登攀開始 |
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ハイステップがしんどい
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足長い |
山頂直下はボロハーケンが打たれている岩場があったが、右側に進み狭いガリーを登る。ガリーを登り終え細いリッジを数m進むと、広めのリッジに乗りあげ山頂とその手前の峰が見え、奥には大汝山も見えた。山頂まで50mほどだろうか、山頂には2人ほど人がいた。
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時折振り返ってみる
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山頂手前のドームは、中央部が階段状になっていたが最下段がハングしておりちょっと難しそうだ。右側はスラブ状を右上すれば行けそうだがⅢ+ぐらいに見え、アイゼンとアックスで行くのは躊躇された。悩んだ末、左の様子を佐藤さんが確認したところ行けそうであるため、左から行くことに。切れ落ちた場所のトラバースで足場が結構悪かった。途中でハーケンがあったので念のためスリングを掛け手がかりとする。
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ドームが立ちはだかる
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ドーム左側のここをトラバース、左側は切れ落ちている
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ドームをトラバースしてほんの少し登ったところにハーケン3つと怪しいスリングで作られた終了点があった。そこから細めのリッジをさらに20mほど進み富士ノ折立の山頂に10時56分、取り付きから1時間22分で登頂。結局怪しい所は巻くか確実に突破する作戦でスピーディーに行動し最後までロープを出すことはなかった。山頂では一般ルートから来た4人PTの姿もあった。それはそうと佐藤さんの調子はだいぶ良くなり登攀区間はペースも順調であった。一安心。
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ドーム終了点から山頂を望む
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そそくさと山頂を後にし大汝休憩所で小休止。この辺りは風があり、吹き付ける雪氷が顔に当たり痛かった。補給を終え雄山を横目に一の越山荘へと下っていく。この辺りは人が多く若干渋滞気味のところもあったが抜けるポイントで先に行かせてもらう。
<龍王岳・東尾根>
一の越山荘から龍王東尾根へのアプローチを確認する。よく見るとトレースがあり、さらには東尾根を登っているPTが2組見えた。ありがたくトレースを使わせてもらうこととする。これが〇〇の登山スタイルだ。
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龍王岳東尾根へ向かう
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13時22分、2674m付近のⅠ峰手前の尾根上に到着。軽く水を飲んで特に休憩もせず進む。
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取り付きより |
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ハイマツが煩わしい
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龍王東尾根は若干雪に埋もれたハイマツ帯がところどころあり、グレード的にはⅢ+~Ⅳ近い所があり、丸山中央よりも難しく感じるところがいくつかあったがロープを出さずとも巻いたりすることが可能なので結局ロープは出さずじまいであった。
クライミングの楽しさ的にそれでいいのかと若干自分に問いかけたが、総合的に判断して今回はこれでいいと思った。細かいことはいい、単純にクライミング要素を楽しむのであれば夏に来たらいいだけの話である。今回は継続登攀であったりルーファイやスピード感を重視し、そのあたりの経験を積んで楽しむことが主目的なのだ。カムを使えば行けそうなところもいくつかあったがドラツー怖いですから。。
Ⅰ峰のトップで先行男女PTに追いついたので、ロープ出しました?出すとこありますかねー?なんて会話をしながら先に行かせてもらう。
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基本的には簡単な岩場の連続
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Ⅰ峰から先は若干の悪場も多々あり、Ⅱ峰のよくわからない感じのピーク(Ⅰ峰より低いのでは?)手前は細いリッジとなっている。Ⅱ峰をどうやって越えるか観察し、ハーケンを複数見つけるがボロボロだしドラツーしたくない気持ちが大きかった。というわけで右側のハイマツ帯に逃げてⅡ峰に上がる。
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小さな峰々 |
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疲れの色が見える佐藤さん
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Ⅲ峰から先は再度ハイマツ帯が出てき、アックスを叩きつけたり掴んだり、フェースがあったりと変化に富んで面白い。最後は雪稜に上がりしばらく進んで取り付きから1時間29分。14時51分に龍王岳山頂へとトップアウト。間もなくして後続PTも到着し、写真を撮りあった。
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山頂で剱岳をバックに
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日も沈み始めるので暗くなる前に下山を急ぐ。下山路は一の越山荘から立山トンネルを横切るルートにしたが若干ルートを玉殿岩屋方面に外したことによりラッセル多めで、幾度となく渡渉したり踏み抜いたりと中々に時間がかかり、テント場に戻ってきたのは18時2分、行動時間は13時間17分となった。
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一の越への下り |
夜は塩魚介?鍋にした。1日目のキムチ鍋は豚肉であったがこの日は鶏ササミ。なぜかもやしを入れ忘れたがそれに気づいたのは翌日であった。そして野菜やその他具材が多く、シメの麺2玉(もちろん乾麺である)に手を出すことはなかった。
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塩何とか鍋 |
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サッポロ |
3日目:白銀の立山テント泊
撤収して帰るだけ。この日から天候が悪くなる予定だったので始発のバスに乗るために頑張って早起き。珍しく出発の2時間半前に起きた。ちゃんと起きれてえらいと自分をほめながら片付けした。行きとは違って食料をほぼ消費したのでいい感じにパッキングすることが出来た。
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そこそこ綺麗にパッキングできたか
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室堂までの登りが一番しんどい。気持ち的にも。定番の雷鳥スポットに雷鳥さんがいるようで人だかりが出来ていたが、割といつでも見られる感はあるのでスルーしてヒーヒー言いながら石階段を登る。とにかく辛いなと思いながら便意のために先に出発した佐藤さんの後を追う。どうやら無事間に合ったらしい佐藤さんと室堂で合流し、今回の山行は無事幕を閉じたのであった。
反省会
富山に来たら大抵寿司だが今回はラーメン。ラーメン一心の塩レモンレアチャーシューミニ丼と白えびラーメン大盛。平日ランチなのでボリューム満点でお安い。帰りは夕方の高速バスで帰ったがガラガラだった。
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チャーシュー丼 |
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白えびラーメン |
以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。
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