弥山川(奈良県大峰山)がとにかく大好きなダイソン。
ダイソン。彼の目標の一つに、関西屈指と言われる双門ルートにある双門の滝70mを登るというものがあった。そんな大滝登攀(氷)に福本を合わせた3人でこの冬挑む事となった。
尚、双門の滝(水)はこれまで登攀された記録はあるが、純粋なアイスクライミング(ここではアイゼン+ダブルアックスの使用を指す)での登攀記録は見当たらなかった。
つまり我々がアイスクライミングで登れば、アイスクライミングでの初登という事になる。
尚、冬期の登攀自体はワンコさんが平爪アイゼンとテムレスでフリーで登っている(笑)
ワンコさん曰く、「お前らがアイス初登や」とのことなのでそういう事にしようと思う。
※本山行記録がROCK & SNOW 099号(別冊山と溪谷)に掲載されました。ロクスノ掲載分は書き直し+メンバーの感想なども追加しているので是非手に取って読んでいただけると幸いです。
日程:2023年1月3日~4日
山行形態:アルパインアイスクライミング
メンバー:がんちゃん、ダイソン、福本
主な装備:カム#0.25~#2、スノーバー1、デッドマン1、テリア1、ハーフロープ50mx2、アイスバイルx2、縦爪アイゼン(モノポイント)
山行詳細
事前準備
ダイソンは本山行への気合いの入り方が違った。
登攀にあたり下記の通り事前準備をしてきた。この事前準備はすべてダイソンが単独でこなした。
●1回目:11月15日〜16日
①双門の滝下で3人泊まれるか検証
・右岸の立木テラス:
ギリギリ1人分のスペース。テラスと言っても滝壺に向かって傾斜しており少しずつズリ落ちる。両サイドは急斜面なので寝返り打つと落ちる。この日は木にセルフをとって一泊。
・滝壺右岸の砂利溜まり:
整地すれば3人分のスペースはあるが岩壁からの落石リスクが高そう。
・右岸斜面スノーマウント:
全体的に傾斜が強いので、雪を集めて一箇所に盛ること自体難儀しそう。3人用雪洞掘れるレベルの積雪だとそもそも到達困難。
検証結果: 3人での滝下泊は厳しい
②滝壺横断可能箇所の確認
岩と岩の隙間が雪で覆われてスノーブリッジとなった場合、踏み抜くと怖いので、岩の並びや形をよく確認した。
●2回目:12月15日〜16日
①双門の滝上で3人泊まれるか検証
河原に充分なスペースあり。ボコボコだが積雪あれば問題なさそう。
→結局このプランを採用した。
②双門ルート目印テープの増設
昨シーズン(2022/1/15に双門の滝訪瀑を試みるも敗退、ダイソン)元々付いている目印テープが雪で埋もれ、ルートが全く分からずかなり苦戦したため、高い位置に設置。
③双門の滝頭のハンガーボルトに目印トラロープ設置
ハンガーボルトが雪で埋もれても見つけやすいよう、ボルトと立木をトラロープで結んだ。結局、当日はトラロープも雪の下に埋もれていたが、トラロープをなんとか掘り出すことができ、ボルトも無事見つかった。
③三鈷滝偵察
3段それぞれに深い釜があるので安全に横断できそうな箇所の確認。時間があれば登攀する。
2回目の偵察では実際に一人でテント泊するつもりだったが、河原に着いてザック開けたらテントが入ってなくてびっくり。タープ泊で解放的だったとのこと。
尚、増設した目印テープやトラロープは雪解け次第回収予定です(回収済み)。
登攀時の詳細記録
1日目:アプローチ
7時8分、熊渡スタート。駐車スペースに積雪無し。車とバイクが1台ずつ停まっていた。
11時ごろ下降開始。11時40分頃、弥山川に着き当たる。ここでワカンを外す。
12時21分、5時間13分で双門の滝上(幕営地)、標高約1330mに到着。
ここから滝壺への懸垂ポイント(徒歩2分、渡渉踏み抜き要注意)に向かい、ドローンを飛ばして氷結具合の偵察を行った。
その間にダイソンは目印を付けた懸垂下降用のアンカーポイントを掘り起こしていた。
ドローンで偵察した感じでは下部(滝壺付近)は薄く到底登れそうにないように見えた。上部の奥まったところも黒く岩が透けて見えているようで、この時点で登攀は無理そうだと諦めモードになった。
翌日は懸垂で降りて滝観光だけになるかなー・・・という気持ちが強かった。
そんなこんなで夕飯としたが、食担の福本が主食の乾麺と調味料を忘れるやらかしをしてしまう。しかし、なぜかダイソンが大量の餅を持って来ていたので(食担と勘違い・・・?)ひもじい思いをせずに済んだ。
2日目:双門の滝 アイスクライミングでの登攀
6時半行動開始のつもりで4時起床。二度寝して4時15分起床。朝食を終えダラダラ準備している間に、ダイソンが懸垂用ロープの設置を行った。尚、登攀する気力というか可能性は少ない事もあって、登り返し出来るシステムを構築しておいた。しかし一応登攀装備はすべて持って行った。淡い期待を胸に抱いて。
やはり、下部の凍結は甘く水が轟轟と流れている。とてもじゃないがプロテクションを取れそうにない。
双門の滝全貌 |
上部の奥まった部分はあまりよく見えない。右側から中段まで上がってのぞき込み確認するしかなさそうだ。念のため登り返し用ロープにアッセンダーをセットして雪を払いのけ岩を登って行く。ここも結構スリリングで踏み抜きもある。実際、Ⅲ級ぐらいのグレード感であった。
7時50分、中段に上がりダイソンと二人で内部を確認。出だしはまぁなんとかなりそう。上部の奥まったところは氷柱となっている。
中段(ビレイ点)から確認 |
このあたりが短いがバーチカルとなっており、水が流れているのが視認できる。側壁は少し雪が付いているが薄いのがよく分かる。ギリギリスクリューを打てそうな感じでもあるが氷はデリケートそうだ。私の心のように。
ただ、横幅は人間1.5人分ぐらいの感じで体を入れられるためステミングが効きそうである。まぁ何とかなりそうだなという事で登るマインドに切り替えた。そうと決まれば福本を引き上げる。念のため持って来ていたスノーバーを少し出ていた岩の隙間にぶち込み、運よくあった残置ハーケンと合わせた2点でビレイ点とした。
さて、懸垂用に使ったロープを引き下ろそうとしたが、うんともすんとも言わない。どうやら引っかかっているようだ。ダイソンがユマーリングで上がり何とかした。雪に食い込んでスタックしていたようだ。
気を取り直して登攀開始となった。
1ピッチ目:40m、がんちゃんリード
9時、登攀開始。
最初は寝ていて簡単そうだが脆い所はやはり脆い。雪を払いのけながら登る。氷がスカスカな所も多数あるが難なく抜ける。
2段ほど上がったところで核心の氷柱。間近で見るとスクリューを打てそうなところがほぼない。というか打った所で効くのか・・・?という疑心暗鬼。まぁそれでも打てるもんは打つしかない。
試しに氷柱にスクリューをねじ込む。すっぽ抜ける。唖然とする。別の場所を探して何とか効いてそうだという事で、周りのツララをポキポキ折りながら登り始める。
氷柱の真ん中でスクリュー。これまたスカスカですっぽ抜ける。他の場所を探して打つ。最近買ったブルーアイスのステンレススクリューがいい感じ。
氷柱の抜け口でもう1本。ここで福本が写真を撮るためにポーズを求めてくる。おいおいおいと思いながらポーズを取る。インスタ用に縦構図も撮ってと指示しておいた。
9時30分、登攀開始から30分で40m伸ばしトップアウト。カム1個とデッドマン、雪にぶち込んだアックスの3点で終了点を構築。次に福本を引き上げる。
10時39分、最後にダイソンが登ってきた。
各々が喜びを分かちあいながら装備を片付けテンバ(徒歩2分)へ戻った。
下山は足が軽い。菌(キノコ?)に感染した死んだハエ?が落ちていた。
11時26分、下山開始。
14時42分、駐車場へ下山完了。
実際の登攀ルートは下記の通り。
青:懸垂下降、40m
黄:アプローチでの登攀、約20m(Ⅲ級?)
赤:アイスクライミングでの登攀、40m、Ⅲ~Ⅳ級?
完走した感想
ダイソンから完走した感想をもらったので紹介する。
「世界一かっこいい滝を間近で見ながらの登攀という素晴らしすぎる時間を味わいました。がんちゃん、福本さん、本当にありがとうございました。」
「達成感もすごいですが、むしろ弥山川でやりたいことがさらに増えました。双門の氷瀑リード、下半分の登攀、三鈷滝氷瀑登攀など。平爪ノーアックス確保無しは流石にやりません(笑)」
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ダイソンの現地での(下山してからもだが)テンションの上がりっぷりは本当に凄かった。準備から何から何まで彼に任せて私はリードしただけだが、ここまで楽しんで、喜んでもらえて本当に良かったと思う。
次はきっと弥山川ゴルジュ遡行や、沢登りとしての双門の滝登攀に挑戦するはずなので、ダイソンの報告を楽しみに待ちたいと思う。
よかったらYoutube(がんちゃんねる)も見てください。
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