[冬季アルパイン]錫杖岳 北沢大滝~本峰正面ルンゼ 2023/2/25

2023/02/27

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本峰に突き上げる雪崩の巣窟ダイレクトルート

ナミエどんからお誘いがかかった。甲斐駒の黄蓮谷左俣に行きたい、ラッセル要員を集めて欲しい。と。そんなこんなで声をかけてみたはいいものの、よくよく考えると2月も後半である。色々厳しいのでは・・・というか滝はほぼ埋まっているだろうしラッセルするだけでは・・・?


と思ったのでプラン変更を命じた。そんな私の提案は錫杖岳。以前から気になっていた中央稜~グラスリンネに行きたかったのである。何となく名前が気になっていたのだ。グラスホッパーとかもユニークな名前だなと思う。ただのバッタやけど


ただ、中央稜は登攀要素が若干強いので心配だ。それならばと同じ錫杖の北沢大滝~正面ルンゼ(見張り塔からずっとの冬季版ともいえるようだ)に目を向けた。こちらはどちらかというとアイス要素が強く、アイスに関して言えば私より全然登れるナミエどんにうってつけである。


そうして前々日にアサコさん、親分、ナミエどんと御在所でアイスを堪能した我々は初めての(二人とも)錫杖岳へと向かったのである。尚、ルートグレードは冬期クライミング本では3級下、アイスクライミング本では4級上となっておりもはやよく分からないが、ルートの特性上、前々日あたりからの天候やスピードが重要だなと(終わってからも)思った。

山行概要

日程:2023年2月25日

山行形態:冬季登攀

メンバー:がんちゃん、ナミエどん

主な装備:カム(ナミエどんが持ってくるの忘れたアホー)、ハーケン、アイススクリュー10本(6本程度で十分だった)、シングルロープ60m、ナッツ、ハーケン1枚


山行詳細

槍見温泉~北沢大滝

槍見温泉に駐車しクリヤ谷の登山道沿いを進む。
4時48分スタート。

なんだかんだ予定より50分近く遅いスタートとなったがトレースは無かった。ラッセルを覚悟してワカンいるか?と思ったが同日にグラスホッパーを登りに行くらしいアサコさんに、いらないよ!!と言われたので結局持ってこなかったが、足首程度の雪で良かった。ゆっくり歩いていると後ろから人が来た。どうやら1ルンゼか2ルンゼを登るとのこと。道を譲る。若干分かりにくい道にトレースを付けてもらえるのでありがたい。ありがたやありがたや

この下でしばし休憩しアイゼンを装着

嫌な感じの渡渉を越え、ビバークできそうな岩屋に6時34分。ここで休憩しアイゼンを装着した。そこから少し進みクリヤ谷から外れて、所々デブリがあるデブリーランド錫杖沢を詰める。大岩も多いのか、踏み抜きもありラッセルに少し苦労した。ナミエどんは片足ドボンした

錫杖沢デブリーランド

全て沢筋を進んだが少し尾根に上がった方が楽かも

錫杖沢を詰め上がると北沢大滝なのだが、ここまでチェーンスパイクだったナミエどんが取り付きの直前でうっかり足を滑らせ100m近く滑落してしまう(ガチのやつで本当にびっくりした)。それほど積雪はなく、薄い雪の下が氷だったのだ・・・。幸い軽く頭を打ちタンコブが出来た程度で、大丈夫とのことなので続行である。メンタル的には相当凹んでいたらしく、この日はずっと引きずっているようであった。

1ルンゼに行くと言っていた先行パーティーも、丁度1ルンゼ前に来ており相当心配をかけてしまった。大丈夫でした、スミマセン。尚、1ルンゼは下まで繋がっていないようであったがそんなものなのだろうか。

北沢大滝の入り口手前

さて、北沢大滝手前で休憩し装備を整える。取り付きは50度ほどの緩い狭い氷を左に入る。入ってみるとそこはラビーネンツークと呼ばれる雪崩の通り道が幾筋かあり、その名の通り時折小さいチリ雪崩が迫ってきた。独特な模様でもあり面白いなと思った(語彙力の低下)。

入り口手前の深い雪

北沢大滝の入り口を下から

北沢大滝の狭い入り口を抜けると徐々に斜度が

ノーロープで進んでいくが、それなりのスピードで登る事もあって脹脛が結構キツイ。時折休みながらもなるべく早く抜ける事を意識した(ここまで結構時間を食ってしまったし)。少ないながらも雪はずっと降り続いている。

ダブルアックスで快適に登る

幸い、ここ数日での降雪はあまり無く、気温も低く雪の下は氷がしっかりとしていた。天気予報ではほぼ曇りだったが時折太陽が顔を見せるのが気持ち良くもあり、雪崩を誘発しないかと不安でもあった。

ひたすら登る

程よい氷でバイルもアイゼンもしっかり決まり、サクサク進めるのが気持ち良かった。脹脛は悲鳴を上げそうであったが、正面ルンゼのアイスセクションをリードする気満々だったので(そんな事は伝えていなかったが)、なるべく温存するように努めた。私自身は雄たけびを時折上げていたが。上部は若干傾斜が増したが、それでもノーロープで問題ない程度であった。

あちこちに様々な氷が

ひーひー言いながら本峰フェースに辿り着く。左へトラバースし、大洞穴と大きな氷柱が正面ルンゼの目印なのだがイマイチどこだかよく分からない。一か所悪そうに見えたところでアンザイレンしたが無くても大丈夫だろう。参考写真と見比べながら、あそこでもない、ここでもない、これがグラスリンネか?と言いながら彷徨い時間を貪る。直上ルンゼやグラスリンネからも頻繁に雪崩があったので要注意である。

正面ルンゼを探す

直上ルンゼやグラスリンネあたり

大きめの、遠目にはとてもⅢ~Ⅳとは思えないような氷があった。いやー、あれじゃないよなー結構立っているし、と引き返し、いやでもちょっと近づいて確認したい、、とか言いながら近づいてみて確かめたらどうやら正面ルンゼはこれらしい。

いざ、真下に来ると思ったほどそそり立っているわけではなく私でも登れそうだ。そして裏側がまさに大洞穴と言った感じであった。下部はそれなりに雪で埋まっているようで、高さはそれほどなかった。ワクワクしてきた。

トラバース、一番奥が正面ルンゼ、このあたりも雪崩が

正面ルンゼ

1ピッチ目:がんちゃんリード、55m
取り付きで準備をしていると時折雪崩が。基本的には小さいが、たまに大きめのも流れてくる。どれぐらいの時間間隔で流れてくるか計ってみたがあまり意味は無かった。メンタルがやられ気味のナミエどんは、雪崩のアイスなんて・・・もはやフォローですら行きたくない・・・と言っているではないか。というわけで1ピッチ目のリードをやらせてもらえることに。ワクワクが止まらなかった。

氷の状態は良さそう

まずはアイスパート。バーチカルだがそれほど高さは無く何だか登りやすそうで一安心。雪崩が来たタイミングを見計らってスタート。緊張しながらも5mほどの氷柱を越えると少し斜度が緩むがちょっと薄い。中アイススクリューが入りきらないので小アイススクリューにチェンジ。

氷柱の横はテラス状になっているのでそこからビレイ

さらに進むと左側には凹角、右側には氷瀑が。ロープはここで半分ほど。ピッチを切るいいタイミングなのだが、スピードを優先しまだ伸ばせるという事で進むことにした。

何となく左の凹角がルートなのか?と思うがそこから雪崩が押し寄せてくる。その瞬間、右の氷瀑に進む事を決める。いざそちらに進んだはいいもののちょっとしたベルグラで神経を使う。

ロープスケール10mほどの氷瀑を越えるとやや急な氷と雪になるがそろそろロープいっぱいである。心もとない雪氷にアックスとスクリューで何とか終了点を構築してピッチを切った。フォロービレイ中も幾度となく小さな雪崩があちこちから押し寄せてきた。面白いなぁと思った。


2ピッチ目、ナミエどんリード、50m
そのままやや急な雪氷を30mほど進み右側にある小さな氷瀑を登りその先の頼りないブッシュでピッチを切る。13時28分、フォローで登攀開始。

2ピッチ目、中央に見える氷柱の左側の緩いところを登る

2ピッチ目終了点、頼りないブッシュで

3ピッチ目、がんちゃんリード、10m
目の前のミックスをどう行くべきか悩む。とりあえずフリーでも行けるかな?と思いそのまま進んでみるが目の前にして結構悪そうだなぁと思いピッチを切った。

3ピッチ目、ブッシュからミックス壁まで、キノコ雪も見える

4ピッチ目、ナミエどんリード、40m
このピッチが今回の核心だったように思う。出だしは頼りない細い枝が所々出ているだけでまともな支点は取れない。岩も脆い箇所が多い。あーだーこーだ言いながらナミエどんがリードする事に。ナミエどん的には左から行けるんじゃ?とのことなのでお任せしたがどう見ても悪く支点が取れない。結局一旦戻り、右側から。かなりヒーヒー言っていた。左右にそれぞれキノコ雪も見える。

悪いミックス

序盤のミックスを越え、姿が見えなくなってからも傾斜の強いミックスセクション。突き当りに岩があるのでそこを左に入るが、ちょうど残置ハーケンが。カムがあれば何とかなっただろうがナミエどんが忘れたのである!

そもそもナッツを持って来ていたのだがなぜかザックの中である。ただの重りだった。最後は雪壁ブッシュを越えてトップアウト。

ナミエどんはここで終わり?え?どこー??って感じだったが間違いない。そこから本峰2168mを目指してトラバースしていったのだが、これまたツリーホールや深い雪に阻まれてなかなか進まなかった。ある意味一番苦労した。

15時41分、北側の本峰に到着。11時間ほどかかった。喜びを分かち合い、ホッとした。

有名なピッケルは南峰にあるらしい

下山

下山は2100m付近のコルからクリヤ谷方面に。ありがたいことにトレースがあったのでそれを辿る。途中でスキー跡と思われるものが。こんなとこを滑る人もいるんだなぁと感心した。景色を眺め、反省会をしながらダラダラと下山した。たまに真面目に下ろう!といいペースを上げたりもしたが結局ダラダラ下った。19時13分、無事に駐車場へと戻ってきた。


11時間半ほどの予定だったが、結局14時間半ほどかかった。トラブルがあったり、正面ルンゼの取り付きがあーでもないこーでもないと言った以外は、割とスムーズに行動出来たと思う。体力や技術面でも特に不安な事は無く、充実の登攀が出来て良かった。翌日ははもずしでアイス予定だったが起きれなかった。筋肉疲労的には疲れていたので休んでもいいだろう。と思いつつ既にアイスがしたいのであった

どの壁も、氷も格好良かった

追伸

BlackDiamondのアイスグローブは湿ってる雪は全然ダメだなと思った。操作性とかは良いのだがすぐ保水して凍るのがよろしくない。

色々考慮してグローブはBDのアイス用2つと、アウトドアリサーチの3フィンガーミトンの合計3セット持って行って正解だった。3セットにしたのは、腹に入れて乾かす作戦が煩わしかったためで、使い物にならなくなったら交換する作戦のためだ。

インナーグローブはVBL作戦(ヴェイパーバリアライナー)という事で、ニトリストタフプラス1枚ので行ったが十分でした。スマホをいじれるし便利。ただし汗べちょになって手がフヤフヤで臭くなるのが難点。

結局、アウターグローブは北沢大滝までは雪を触りまくるのを考慮してORで1セット、正面ルンゼから山頂までの登攀セクションでBDを1セット、下山時にBDを1セット(テムレスと交換したけど)って感じでローテしてちょうど良かったです。あとBDグローブは耐久性が低いので岩とか触るとすぐボロボロになります。最近は安くないしBDグローブの総合力が落ちた気がする

ナミエどんは登攀以外はニトリス+テムレスだったが、下山時にテムレスで冷たいって言うから乾いてるBDを渡してテムレス奪ったが、テムレスは気温が低いとやっぱりダメだなと思いました。普通に冷たい。保水しない点はいいけど比較的暖かくて風が弱い時に限りそうです。

以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。

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