冬山シーズンイン、アイトレよろしく宝剣岳に行こう。とムラっちが言うので。
そうと決まれば、まだ登っていない西面のルートが良いだろう。割と短めの天狗尾根を1日目に、長い極楽尾根を2日目に登る事となった。
アイトレするようなルートか?と思いながらも苦い敗退の思い出(中央稜登攀敗退)のある宝剣岳へと我々は向かうのであった。
日程:2023年11月25日~26日
山行形態:冬期登攀
メンバー:がんちゃん、むらっち、ひろゆき
主な装備:カム#0.2~#2x2セット、#3x1、オフセットナッツx1、ハーフロープ60mx2
山行詳細
1日目:宝剣岳西面 天狗尾根 学芸大ルート
菅の台バスセンター駐車場、全然車が停まっていない。人少ないなー。と思いながら始発よろしくに乗るために7時ぐらいに到着。ダラダラ過ごして、装備を確認しつつ8時15分ぐらいの始発バスに乗る。
紅葉が綺麗 |
荷物を座席に置いても全員が座れるほどであった。
バスに揺られ、ロープウェイで上昇負荷を感じ千畳敷カールへと降り立つ。空気が冷たくて気持ちいい。
アイゼンを付けようか悩んだが必要無さそうな雪だ。いらんわ。と思って9時25分ごろ出発。案の定特に凍結も無く、踏み跡もあるので快適だが久しぶりの重い荷物(なぜか25kgあった)にゼーハー言いながらアリの行列の一部となる。行列ってほど人おらんかったけど。
ゼーハー坂 |
前回はダラダラ登って1時間ぐらいかかった気がするが、今回は40分ほどで宝剣山荘に到着した。
とりあえず山荘横を整地して我々の聖地とした。この日は兎に角風が強かったので、快適ライフのために雪ブロックを積み上げた。ギンギンには晴れているのだが。
今日はここをキャンプ地とする |
装備を整えいざ出発。A沢を20分ほど下降し天狗尾根の適当な側壁へと取りついた。雪が少なくせいぜい60cm程度か?場所によっては踏むと岩だったりして慎重になる。雪崩の心配が無いのはいいが。
天狗岩 |
A沢の下降 |
1ピッチ目:側壁のミックス、V、がんちゃんリード、40m
まだまだ雪も氷もなく、シーズン始めという事もあり結構キンチョール。蚊はおらんけど。
12時5分、スタート。
登攀ラインは豊富に取れるが、弱点を狙いすぎるとルートがかなり屈曲するようでまんまとはまってしまった。適度にピッチを切ればよかったのだが、予定通りの長さを・・・とこだわってしまいかなりクソルート取りになりロープが重くなった。
1ピッチ目 |
残置ハーケンなどがちょいちょいあった。節理というかクラックと言うか、カムは豊富に取れるので今回は#3は1個しか持ってきていなかったが丸々2セットあってもいいだろう。
逆にナッツは不要だった。
足元の登攀ライン |
そうこうして40mほど伸ばして色んな意味で限界だったのでピッチを切った。
1ピッチ目終了点 |
13時50分、フォロー登攀開始。2時間強も時間を使ってしまった・・・。夕闇の時間が迫っている。ここで話し合い撤退時間を決める。
冬期クライミング本ではピッチグレードVとなっているが実質Ⅳ+ぐらいだろうか。雪がしっかりつけば快適な登攀になりそう。所々草付きもあるが薄かった。
私はハンドル付きバイルだが他の2人はクォークだったので大変だったかも。
2ピッチ目:むらっちリード
14時50分、むらっちのリード開始。ワンポイント悪い感じでのっこせば恐らくリッジに上がる。しかし難しそう。
2ピッチ目出だし |
右往左往し、結局メンタル的なところもあってロワーダウンで戻ってきた。時間も時間なので懸垂敗退する事を決める。
撤退 |
16時26分、懸垂を完了しA沢を登り返した。
本ルートは山頂北側の顕著な岩峰、天狗岩のカンテラインを登るルートだが、近年の記録はあまり見られず?恐らく学芸大ルートを登ったとは思う。懸垂後にドローンで偵察したが、リッジの向こうも雪稜らしきものは見えず、岩稜帯といった感じであった。
無念の敗退 |
やはりシーズン序盤という事もあって雪は少ないのでピリリと辛い登攀(というかアイゼントレ?)となった。
リードしたピッチは反省点も多く、もっと短くピッチを切ったり、弱点ばかり狙いすぎるのもどうかと思った。あとは撤退の判断時間やエスケープルートは事前にもう少し練っておいた方がいいなと思った。沈む太陽を眺めながら思いを馳せた。
突き当たった岩でピッチを切る。残置ハーケンもあった。私はアッセンダーなので大変だった・・・。
月は東に日は西に |
2日目:宝剣岳西面 極楽尾根
3時半起床。朝食はモンベルのカレーリゾッタとミソスープ。リゾッタはイマイチ。やはりアルファ米は尾西かサタケが美味いな・・・。
5時出発。極楽尾根は非常に長いので頑張る日。ロープウェイの終電に間に合わないと悲惨なので。
暗い中を進む |
A沢から宝剣沢を下降する。月明かりがあるものの、空はまだ薄黒く明るくなるのを待つために偵察がてら休憩。末端からだと非常に長いので適当な側壁からの登攀だ。
側壁へのアプローチ |
5時45分、ほうら足元が少しあかるくなったろう。程よい側壁からノーロープで取りつく。
下部1ピッチ目:ひろゆきリード
6時38分、ロープピッチの開始。出だしの凹角にある右スラブが結構難しい。ワンポイントだけで短いと思ってロープ1本。むらっちがリードするも厳しそうなのでひろゆきにプレイヤーチェンジ。
1ピッチ目 |
1ピッチ目ひろゆき |
突き当たった岩でピッチを切る。残置ハーケンもあった。私はアッセンダーなので大変だった・・・。
突き当りの岩 |
下部2ピッチ目:がんちゃんリード
8時13分、2ピッチ目。
岩を右から超えて適度に尾根に乗り上げる。景色が良い。そのまま左にハイマツが出ている箇所を進み、その先はノーロープでいけそうだったので、少し大きな岩の手前でハイマツを頼りにピッチを切ってフォローを迎える。8時39分、フォローの登攀開始。
ハイマツでピッチを切る |
フォロー登攀完了後、ロープを解除し、しばらく左岸側のハイマツ帯などを進む。右手に見える右稜が登りやすそうに見えたので、取りつけそうな右稜のコルを目指し高度を上げ程よい所でトラバースしてコルに出た。
尾根を進む |
コルからは左岸側を巻くようにしてしばらく進むと、三角岩壁が見えてきた。微妙なところもスピード重視でノーロープだった。
ピナクルあたりで残置スリングもあり、懸垂セット。5~10mほどの懸垂で雪稜に降り、見えてる三角岩壁の登攀ラインを探る。
懸垂ポイント |
懸垂後の雪稜(雪が少ない) |
左ラインには氷が無く厳しそうで、右ラインの凹角がなんとかいけるか?とあたりを付け数十m進み、ロープが必要になったところで登攀準備、10時15分。
三角岩壁1ピッチ目:ひろゆきリード、35m
10時25分、奮闘的なパワー――。残置ハーケンなどあり。35mほどのばす。体感Ⅳぐらい。
見た目以上に意外と悪い |
三角岩壁2ピッチ目:がんちゃんリード、20m
11時20分、残置ハーケンなどあり。左の凹角沿いを登る。20mほどでリッジに乗り上げると、遠目に大きな三角の岩が見えて、まだ三角岩壁じゃなかったのか!?と一瞬絶望するがそうではなかったようで安堵。その奥にサギダルの頭が見えた。岩でピッチを切った。
リッジはどうだろう?進めるだろうか?と相談。様子見が必要だったので、むらっちが1本だけロープを引いて偵察に向かう。途中から念のためビレイして欲しいと要請があったのでビレイオン。途中でランナーが全然ないのでフォロー落ちたら終わるな。と思う。
なんとか行けそうなようでビレイしてもらうが、最後の私は待ちきれずに、タイム短縮のためにひろゆきがアッセンダーで進む中追いかける。落ちたら二人で一緒に落ちような。ひろゆきがビレイ点に着いたので、悪い場所だけ途中からビレイしてもらった。
ムラッチの終了点に着いた頃にはひろゆきがノーロープで先に進んでいた。どうやら歩きで行けそうだ。そこからサギダルの頭までは長く見えたものの、意外と短くほっとしたウイニングランとなった。
雑コンテで進む |
ウイニングラン |
12時44分、サギダルの頭に到着。そこからトロルの舌だかなんだかでキャッキャしながら、宝剣岳山頂へ13時20分ごろ到着。居合わせたお二人に写真を撮ってもらった。ありがとうございました。
トロルの舌というらしい |
宝剣岳山頂にて |
テン場には13時40分ごろ到着し、片付けて下山。14時半ごろに千畳敷駅に無事着くことができた。
テントが見えて一安心 |
前日の敗退もあり若干神経質になっていたが(というかロープウェイの時間があるので)、順調に事を進め無事にトップアウトする事が出来た。
これぞ山をやっているな、という感じで得るものも多く良い登攀だった。
シーズン始めという事もあり、雪、氷の状態は悪いが(無い)それはそれで冬壁と対峙しているなと実感でき、2日間を通して自分の引き出し(特にタイムマネジメントやエスケープルートに関して準備し実行すること)を増やす良い経験にもなった。
以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。
よかったらYoutube(がんちゃんねる)も見てください。
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