[アルパインアイス]仙丈ケ岳 三峰川 岳沢 ソーメン流しの滝 2024/1/5-7

2024/01/18

2024年 アイスクライミング アルパイン クライミング テント泊山行 山行記録 雪山 登山 南アルプス

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少し記憶は薄くなりつつあるが、折角なので記録しておこうと思う。と言っても既にヤマレコYAMAPに簡単に残しているのだが。


南アルプスにある大仙丈ケ岳、そこに流れている気がする三峰川(みぶがわ)の岳沢をアイスクライミングで登りつめる。途中にはソーメン流しと呼ばれる110mの大きな滝がある。冬なのにソーメンだなんて。出来ればにゅう麺がいい。


むらっちが思いを馳せていたというこのルート、私は知らなかったのだが(アイスのルート自体あまり知らないのだが)、アイスクライミング本にも書かれている通り、ビッグなルートだった。案の定、行きたいという誘いに2つ返事でOKした。


トータルの獲得標高はおおよそ3000m、岳沢だけでも1100mあるロングルートとなっている。アプローチ、デプローチともにそこそこの距離があるため、通常2泊3日でやられる事が多いが、1泊2日で抜けている記録もそれなりにあった。


2泊するのは食糧とかも大変やしな、まぁ停滞とかトラブル考慮して3日間とっておいて、2日で抜けよう・というわけで1泊2日の予定でレッツトライ。全装なのでなるべく装備の軽量化に努めた(むらっちに煽られたし)。もちろんフラグは回収するのだ。

山行概要

日程:2024年1月5日~7日

天気:3日ともほぼ快晴、2日目の午後少しガス、気温は低くてマイナス2桁になる程度か?

山行形態:アルパインアイス

メンバー:がんちゃん、むらっち

主な共同装備:ハーフロープ50mx2、アイススクリュー大1、小中10、ハーケン2、Qドロ7,アルヌン60㎝x2、バーナー2、ODガス小中1つずつ

全装での登攀になるので、難所は荷揚げをする可能性を考慮してロープは2本とした。水は割と取れそうだったので、私は軽量化でガスを小にした。結局装備は17㎏だった。ちなみに500mlコーラは2本だ。

めずらしくパッキングが比較的まとも

山行詳細

1日目:三峰川林道杉島ゲート(駐車地)~岳沢 F3下

柏木をさらに進んだ林道終点(三峰川林道杉島ゲート)からスタート。駐車スペースは4~5台程度と限られている。トイレなども無いので注意。我々は前泊した。

4時27分、暗闇の中スタートし林道を歩く。
6時4分、Co1210mで休憩。
7時14分、Co1425mで休憩。
9時25分、Co1870m付近、15mほどの氷瀑が現れたがこれは巻く。
10時24分、岳沢越え。
11時20分ごろ、ようやく岳沢の出合いとなる。ここまで約7時間。長かった・・・

アプローチで現れるチムニー状、意外と大変

岳沢出合いから仙丈ケ岳?

途中で幾度かの渡渉があり、軽く靴の中を濡らした気がするが、濡れていても平気だった。靴下までは浸透していないようだ。下山翌日か翌々日にスキー予定だったのだが、それ用の行動食もなぜか混ざっていた。持って来すぎた。。。と思ったがこれが後に・・・。
ちなみにGoProの予備バッテリーを全て忘れた。モバブーは持っていたのだが・・・。

岳沢出合いまでのアプローチはところどころテープがあり迷うような事はない。堰堤は基本的に左岸から越えていったがたまに右岸越えもあり。
微妙なところにはトラロープがあったりした。

ところどころテープが

13時23分、岳沢F1と思っているF1の前衛滝。ここまで9時間・・・。もう少し早いペースで歩けばよかったかなと思い返すが、疲れていないので良し。全装での登攀になるのでこれぐらいでいいだろう。

F1の前衛(F1と思っていた)はまともに凍っていないため右岸巻きを選択するのだが、私は欲を出して登ってしまったところ、その先に窯があった。しかも両岸とも容易に抜けれそうになく、あれこれやってみてたがにっちもさっちもいかなくなり、最終的には渡渉を選択。

F1の前衛?右岸巻きすべし。

裸足になり、靴などを手に持ち一気に駆け抜ける。数秒間、氷水に膝上あたりまで浸かる。寒さにはかなり強いと自負する私だが、即座にこれはやばいと察した。

とりあえず渡った先に座りなんとかする。靴の上にキンキンに冷えた足を置き、懸垂で降りてくるむらっちを待って、「乾いた万能ぞうきん(万能タオルとも呼ぶ)」を受け取り足を拭く。幸い陽が出ていたので耐えられたが、本当に凍傷になるんじゃないかと思った。

この時になぜかグローブを片方無くす。仕方ないので予備グローブに交換。
気を取り直して乾いた靴下を履き(ちなみに替え靴下は持ってきていない)、靴を履き、アイゼンを付け、我ながらアホだなぁと思いながら先に行ったむらっちを追いかける。

14時半ごろ、本当のF1をむらっちがリード。右岸側から。簡単。

F1?

所々に小滝も現れるのでどれがF何かよくわからなくなり、最終的にはF3をF5と誤認していた。

15時45分ごろ、F2はフリーで抜ける。

F2?

16時10分ごろ、ぼちぼちの滝(F2上?)を私がリードで抜け、F5と思っているF3の下へ到着、岩でなんとか終了点を構築しビレイ。

F2上

時間も時間だし、ちょうどいい岩陰もあるので1日目のF3下を幕営地とした。

F3下にはちょうどいい岩影が

翌朝は暗闇の中登攀開始となるので明るいうちに登攀ラインを探る。右側が登りやすそうだ。

テン場からの眺め、このルートには我々だけ。

夕日に照らされたF3は最高の美しさだった

食事は軽量化を意識し、アルファ米にした。夕食は尾西1つと、カレーメシ1つに男爵いもスープ。水は近くをジャバジャバ流れていたので助かった。

夕食、カレーメシはα米の袋を再利用する

寝具はむらっちに軽量化しろと散々煽られたので、冬シュラフではなくOMMのマウンテンレイド160(快適9℃)、これだけじゃキツイかなと思ったのでインナーにOMMのコアライナー(噂によると体感5℃アップとか・・・?)。いいお値段だった・・・(2つ合わせて定価7万円)。マットはいつものニーモのテンサーアルパイン(R値4.8)とした。

あとは上下ダウンウェアに象足(安いNaturehike)。それほど気温は低くなく、風もなかったのでこれでまぁなんとか寝ることが出来た。尿意では起きたが、寒さで起きることはなかった。

一方のむらっちは、これだけ私に軽量化しろと言ってきたのに、なんと「エア枕」を持って来ていたのだ。絶対代用できるやつだろそれ。

19時25分就寝。

2日目:F3~松峰小屋

3時半起床。朝食はサタケ米1にミソスープ乾燥野菜マシマシで。なんだかんだ8時間近くは寝れたので調子は良さそう。

準備をしているとトラブル発生。むらっちアイゼンの前ベイル?(金具)が一つない。周囲を捜索、最悪捨て縄で何とかするか・・・と思っていたが10分ほど捜索して見つかった。良かった。

そうこうして時間を少し浪費してしまったが5時43分行動開始。

F3のリードはむらっち。氷は陽が出る前でも少し水気を含んでいるのか、表面はポロポロと崩れていく。
幅広のF3は右が弱点で長くもないので問題ないだろうと思っていたが、慣れない暗闇登攀+全装によって難易度が上がったのか、3ピン目を取ったあと当たりの短いバーチカル部分で痛恨のフォール。

暗闇の中、F3を登る

その際の落氷が私の頬にあたり軽く流血するも気にしない事にした。気を取り直してむらっちがリード再会。若干手にも来ているのか。フォローは兎に角スピード重視でハァハァと息を上げながらさっさと登る。この時点ではF5と思ってるし・・・。

F3上部は一応交代してロープを伸ばしてF4手前までロープを引く。

7時40分ごろ、F4をリード、中央あたりから取り付き左上する感じでトラバース。バーチカルでもぞもぞして痛恨のアックステンション。。。終了点は残置スリング、ハーケンなどがいくつかあった。ハーケンはグラグラだったので引いてみると抜けた。叩きなおしても効きそうにないので、バイルトルキングを駆使して終了点構築。

F4

F4をリード

いまいちな残置があった

8時43分ごろ、多分F5。

F6、登りたかったが時間が微妙。むらっちは右岸バンドを巻き推奨。私は登りたかったので多少反論したが諸々考慮して巻きを選択してバンドからF6の中段へ。そこから確保して上部へ抜ける。巻きのトラバースはちょっと悪かった。
F6のバンドはワンポイント悪かった

F6、右岸からバンドをトラバースして巻き中段に出た。

10時27分ごろ、F7あたりをフリーで抜ける。

F7はフリーで

恐らくF7

10時35分ごろ、今回のルートのハイライトであるF8のソーメン流しの滝に到着。休憩。

F8取りつきにて

11時5分、F8の登攀開始。下部は簡単なのでむらっちを先頭にコンテと思わせたフリーで。傾斜が出てきたところでビレイ点を構築し1ピッチ目を私がリード。上部2ピッチ目の取り付きでスクリュー2本と気持ち程度のアックスバックアップでピッチを切る。

F8下部は簡単

F8の上部、2ピッチ目

この後スクリュー大をなぜか落としてしまいF8の取り付きまで落ちた。時間的な事もあり回収せず諦めた※。ちなみにむらっちに私のカラビナ1個を落とされた。アーメン。

※我々の翌日から岳沢に入った新潟クライミングクラブの方が回収してくれており、ヤマレコの記録で発見して連絡、送付してくださいました。ありがとうございました。

F8、1ピッチ目を上から望む

12時10分ごろ、2ピッチ目、むらっちリード。陽も上がってきており暖かい。氷は結構水を含んでいる感じでそれほど気持ちは良くないが、高度感はありその点では楽しい。相変わらず表面が脆いので何回か叩かないとしっかりと決まらないので、少し慎重になって登る。

F8ソーメン2ピッチ目

このあたりからむらっちに若干の疲労感が見えてくる。沢にも充満した新雪(かどうかはわからないが)があり、吹き溜まっているところもあり所々ラッセルの様相となる。F9は私がリード。まだまだ楽しい。登り足りない。

F9

昼を過ぎ、徐々にガスってきて時折陽が当たらなくなる。気温も下がって来ただろうか。F10らしきものが遠望出来た。どこから尾根に上がるのか不安だ。

F10

少し前の記録ではこのあたりで尾根に上がっているものもあったが、藪が濃そう。逆に時間がかかりそうだなと思ったので、F10と思われるとこまで行ってみることに。

F10下部はフリーで

遠望ではかなり大きく立っているように見えたが、近づけば意外と小さく簡単に登れそうだ。下部はフリーで登り、上部をむらっちがリード。水がジャバジャバ流れている。叩くと水が噴き出した。

F10の上部?むらっちリード

F10を越えさらに進むとようやく奥の二股となった。雪は膝あたり。ここから左のルンゼを詰め上げて稜線に出ることに。あらかじめヘッデンを装着するにあたり予備電池に交換したら点かない。むらっちから予備電池を奪う。これでカラビナの件はチャラとなってしまう。


奥の二股、右俣にはF11?

左ルンゼをあがり斜度が上がってくる。時折ハイマツの上を歩くが思ったよりはしんどくない。意外とハイマツ上に乗れるので深いラッセルより幾分ましである。バランスを取りながら進む。むらっちのペースが落ちてくる。


稜線に詰めていく

17時4分、リッジに乗り上げる。当たりは暗くなり始めていた。風も吹きつける。

リッジに乗り上げた

17時59分、大仙丈ケ岳。むらっちの様子を見ながらゆっくりすすむ。弱音を吐き始めている。本当はこの日に下山する予定だったが、松峰小屋に入りたそう。私はまだ下山するつもりだったのでとりあえずむらっち鼓舞する。

大仙丈ケ岳にて

18時54分、仙丈ケ岳。むらっちが相当疲れている。風も強くなってきた。ここは休まず通過し、風が無い所で休憩。休憩するとブルブル震えている。行動食などはまだあるようだが、あまり口にしていないというか、スナック菓子メインで食べているようだ。水分もあまりとれていないのか。私のラムネやぬるま湯などを摂らせながら進む。

流石にこの日の下山は無理そうだし、無理に降りたところでといった気持ちになり、松峰小屋まで頑張ってもらうことに。頑張れと声を掛ける。まだまだ遠いがコースタイム+αぐらいのペースだろうか。所々休憩するが、休憩するとむしろ震えているので、補給をしたらすぐに歩かせるようにした。恐らく水分、カロリー不足(すぐにエネルギーにならなさそうなものを行動食にしていた)による低体温気味なのだろう。私のエサを与える。

22時36分、松峰避難小屋着。

翌朝撮影した松峰小屋

小屋には4人ほど先客がいた。夜分遅くにごそごそとすみませんでした。風はないが、隙間はあるのでなんだかんだ寒かった。テント内より寒かった説はある。近くの水場(小屋から200mほど下流にあると書かれていた)は見つからず、丹念に探す気にもなれなかったので近くの汚い雪を溶かして水を作った。

予備食糧として持って来ていたα米と行動食を少し食べ就寝。翌日は昼ぐらいに下山出来たらいいやぐらいの感じでゆっくり寝ることに。


3日目:松峰小屋~地蔵尾根駐車場

8時前起床、むらっちは食べて寝たらすっかり回復したようで良かった。

私は軽量化していたので朝食分は持って来ていなかった。行動食が多めだったのでそれと、カフェセットを多めに持っていたので、カフェセットでカロリーを補給。私のガス缶小は底を尽きたので、むらっちのジェットボイルとガス缶中を奪った。

下山用のカントリーマアムチョコまみれ1個(なみえどんにもらった)を残して9時35分に出発。

前日に連絡があったのだが、しずほさんが登っているようだ(パートナーは想像がつく)。割とすぐにすれ違ってお話をする。2日ぶりのむらっち以外との会話に癒される。一応女性だし。一応。下山中に最後の行動食であるカントリーマアムチョコまみれ1個を食べ、12時14分、地蔵尾根駐車場へ。

元気じゃん

何も考えずに林道を下る

といってもここから車のデポ地まではまだ5㎞ぐらいあるだろうか?私は荷物整理をして待ち、むらっちが小走りで取りに行ってくれた。その元気はあるんだな。

下山後はお風呂を探したがゼロ磁場の湯は閉業していた。近くの南アルプスむら長谷道の駅で食事。味噌汁、白ご飯お替りが出来、お土産屋、パン屋もありなかなかよかった。

いつもソースカツ丼なのでたまには山賊焼きを

完走した感想

F6で1回アックステンションはしたもののフォールもなく、すべての滝を荷揚げせず全装で登る事が出来たのは良かった。しかし、各ピッチともに登攀に時間がかかりすぎている気がする。荷揚げせず時間短縮できたのは良かったが、もっと早く登れないとだめだなと。

まるで沢登りのように渓相が変化し(実際、夏に登られている記録もある)、静かな山に二人で入る事が出来て良かった。タイミングによっては賑わう事もあるみたいで、実際、翌日から入山したパーティもいたわけだ。

思い通りにいかない事や諸々のトラブル、なんだかんだ色々あっても最後にいい山をやれた、やりきった、充実した。そう思えるのが一番だと感じました。また一つ、いい山をやれたなぁという感情になれて良かった。むらっちありがとう。

以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。

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