4月になってしまったので「冬期」と表現するのはちょっと、いやだいぶあやしいが細かい事はなんでもいいのだ。

色々と計画していたが氷ないだろうという事で転戦先を探していたところ、明神岳2263m峰の案が出た。


そこには西壁、南壁、東壁など登攀対象となる壁があり、ルートも色々あるのだがあまり詳しい記録は無い。というかまともなトポはあまりないといった方が正しいだろうか。


冬期クライミング本や日本登山大系にもトポはあるがあまりあてにならない。そこは冬壁よろしく、残置もあまりないらしい。でもまぁ他のプランもあれだし、無数にあるルートからほど良さそうなのを見繕って計画書を書き上げた。かき揚げは小エビがいいな。


というわけで今回は1日目に西壁のS字状ルンゼから2263mまで登り、2日目は西壁の大凹角ルートを登るというプランになった。BCは小梨平だ。

山行概要

日程:2024年4月6日~7日

天気:天気よし

山行形態:雪はないけど冬期アルパインクライミング

メンバー:がんちゃん、たごちゃん、ナミエどん

主な共同装備:ハーフロープ60mx2、カム#0.3~#3、オフセットナッツ#7~#11、アブミ1、アイススクリュー小2、ハーケン5、アングル1、テリア1、イボイノシシ3、アルヌン60㎝x10


1日目:西壁S字状ルンゼ

アプローチ

釜トンネルに荷物をデポしてから坂巻温泉に駐車。坂巻温泉は入出庫可能時間があったりするので要注意。6時13分坂巻温泉を出発。

トンネル歩き。土曜日は工事車両などが通行していたので要注意。

下山用の自転車を持ってきたが、どうやら釜トンネルは冬期自転車禁止らしく、ゲートのおじちゃんに置いていくように言われた。上高地バスターミナルまではOKだと思っていたが、今期から変わったのだろうか。悲しいけど仕方がない。

上高地までは持っていけると思っていた。。

登るラインを見る

ダラダラ歩いて8時20分ごろ、河童橋に到着。小梨平でテントを設営してギアを準備。

ライブカメラにて

S字状ルンゼ

岳沢道からルンゼの押し出しまでは約1㎞、押し出しには砂利が堆積しており、目印のような棒が立っていた。雪はない。先が思いやられる。

ルンゼの押し出しにはテープがついた棒が立っていた

ルンゼ入り口

序盤はとにかく暑い。天気が良すぎる。取りつく壁には雪も氷もないんだろうな、と思いながら全日本滝汗協会のメンバーとして誇らしげに汗を垂らしながら進む。

しばらく進むと雪渓が現れた。涼しくていいが遮るものはないので結局のところ陽は我々を照り付ける。雪の反射で暑い。

順調に高度を上げる

雪はほどほどに柔らかくしばらくはノーアイゼンで問題なかったが、時折シュルンドもあるので要注意。途中、翌日に登る予定の西壁大凹角ルートのようなものを発見した。じっくりと偵察する。

目印の洞穴

左岸に見えるのが大凹角だろうか

大凹角?

対岸には氷の残骸が見える。すでに崩壊しており、落石も多い。いい具合に成長していたらきっと楽しいバーチカルアイスになるだろうなと思う。

発達していたら楽しそうなアイスライン

上部に行くと勾配も急になったのでアイゼンを装着。
ルンゼが行き詰まったところから登攀しようということになった。

上部は勾配が急になる

左の壁も登れそうだが右の行き詰まりが楽しそうだったので

ここから登攀することに


1ピッチ目:がんちゃんリード

12時32分、がんちゃんリードで登攀開始。下から見た感じは出だしのハングさえ越えてしまえば案外行けるんじゃね?と思っていたがそんなことはなかった。ナメていた。

雪は腐っておりズブズブ滑る

残置はもちろん一切なかった。壁は非常に脆く進めば進むだけ落石を発生させてしまった。まず岩に乗りこむのが足が悪くにっちもさっちもいかないので、さっそくアブミをだしてA1。谷側を向いてダイナミックにのりこみ反転、バイルを引っかけたりしてなんとかクリア。

そこから左にわたり弱点と思わしきところを進んでいくが、プロテクションを取れるところもなく、凍ってない草付にイボイノシシを刺して心の支えにしたりした。ワンミスでパーティ全員が終了するだろうなと思ったので、触るところ、足を置くところ、アックスを打つところ、すべてを慎重に確認しながら少しずつ進んだ。

唯一、テリアがバチ効きした箇所があっただろうか。中盤の核心を超えてほっとして叫んだが、結局その先もずっと悪く、泥臭いジャパニーズアルパインを堪能する事となってしまった。過去一に悪い壁だったと思う。脳汁は出ぱなっしだったが、おしっこはちびらなかった。ちびる余裕すらなかったのだ。

真ん中の雪の多いラインがS字ルンゼ

ロープが半分ぐらいのところで、ピッチ切れる?と無線があったがそんな場所も余裕もない。突き進むだけ。ろくにプロテクションも取れないので、撤退することも無理だ。対岸の氷のラインはしょっちゅう轟音と共に落石が発生していた。

そしてプアプロとランナウトに耐えながらロープを60mいっぱい伸ばす。

14時14分。全身泥だらけになっていた。喉はカラカラだがアドレナリンがドバドバで意外と元気だった。朝も結構食べていたのでエネルギーも満ち足りていた。登攀開始から1時間半ほど経過していた。

終了点

なんとか終了点を構築しフォローを引き上げているとすぐに無線で何か合図がきた。どうやらナミエどんが落石を肩に受けたようだ。いったんストップがかかる。

結局このまま登攀を続けるのは難しそうということで、撤退することに。仕方ない。本人は相当へこんでいたようだが、私は1ピッチ渾身の力でリードできたので十分だ。凄く良い経験になった。

懸垂できる?とたごちゃんに聞かれたがさすがに今構築した終了点で懸垂するのは嫌だなと思ったので、懸垂支点を作りなおしたい旨を伝える。そもそもハーケンも手持ちが1枚ほどしかない。

というわけで、たごちゃんにフォローでハーケンを回収しながら登ってもらい合流。ビレイ中に対岸からライチョウの鳴き声が聞こえて癒されたが姿は見えなかった。

フォローのたごちゃん

フォローのたごちゃん

合流してビレイしてもらい、少し左にトラバースして硬い岩とリスをなんとか探し懸垂支点を構築した。これにもかなりの時間がかかった。

ヒュンッという音とともに時折落石もあり、生きた心地がしなかった。落石を発生させないようにゆっくりゆっくり降りた。取りつきに着いた時、ほっとした。生きててよかった。18時47分ごろ、無事にテン場に戻ることができた。

構築した懸垂支点

懸垂ラインを見上げた

完走した感想

今回の山行は楽しく充実したものではあったが、この時期にこの雪のコンディションでこのルートを選んで冬期登攀スタイルにした事自体が愚かだったのは間違いないと思う。時期が悪すぎた。

大正池で思いをはせる

ディナー



ロシアンルーレットの要素が大きすぎるのはやっぱり良くない。命がいくつあっても足りない。今回はたまたま運が良かっただけだ。

というわけで色々と疲れたし、軽くケガもしているので二日目はゆっくり起きて大正池を見て下山した。普段はバスで通り過ぎてわざわざ行くこともないのでこういうのもいいものだ。
モーニング

次行くならコンディションいいときに・・

以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。

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