にっちもさっちもどうにもブルドッグ
「ニッチモ」「サッチモ」と聞いて、なんのこっちゃと思ったそこのあなた。
安心してください、私も最初はそうでした。
どうやら昔の流行語らしく、「どうにもこうにも、にっちもさっちもいかない」といった意味があるわけですが、実際にそうなっては困ります。
どうにかするのがアルパインクライマーなので、どにかしてきました。しらんけど。
さて今回のルートは兵庫の雪彦山です。
雪彦山の三峰岳にニッチモ(4p 5.10d)、不行岳にサッチモ(3p
5.10c)のルートがあります。
これらを継続登攀しました。
それぞれのルートがルーファイあり(NP主体でボルト少な目)、ランナウトありあり、プロテクション難しめ(岩が脆く落ちられない)、岩もヌルヌル脆いよモロヘイヤ状態なのです。
つまり、“ニッチモサッチモいかない”シーンがリアルにめちゃくちゃ出てきて、ストレニュアスでスリリングなルートでした。私が好きなやつですね、しらんけど。
純粋なクライミングのグレード以上に、岩の状態を読みながら慎重に登らないといけない、ミスが許されないような総合力が試されるルートです。メンタルもボコボコにされるやつですね!
梅雨の晴れ間を狙って、計7ピッチ210mの継続登攀に挑んできましたが、このルート名は決してダジャレだけではなかったのでした。。。
※トポは日本マルチピッチ フリークライミングルート図集を参照
山行概要
日程:2025年6月7日
天気:曇り
山行形態:マルチピッチクライミング
メンバー:がんちゃん、橋本先生
ギア
50mハーフロープx2、60アルヌン14本ぐらい、カム#1まで1セット、#0.5-0.7あたりを2セット持って行ったが1セットで十分だった。オフセットナッツx1セットは使わなかった。
駐車場とトイレと携帯の電波
雪彦山駐車場(20台ほど、500円)もしくは賀野神社(10台ほど)停めることが出来ます。
雪彦山駐車場は紅葉の時期などは埋まりがちなのでクライマーは賀野神社に停めた方が良いかもしれません。今回は1台も停まっていませんでした。
アプローチの展望台のカーブにも駐車可能なスペースはありますが、ダンプカーが曲がれなくなるようなのでこちらにはあまり停めない方が良いでしょう。
トイレはどちらの駐車場にもあります。
山行詳細
アプローチ
展望台カーブから30分ほど。途中はヒルに注意。行き過ぎて上昇気流あたりまで行ってしまいました。取りつきの目印はちょっと積んであるケルンとヘビゴケでしょうか。ぼーっとしてると見落としてしまいます。周辺にはボルトラダーのルートなどもいろいろあってちょっとわかりにくかったです。
登攀詳細:三峰岳南東壁 ニッチモ 4p、130m、5.10d
1P目:橋本さん、40m、5.10d、OS
なんと朝イチの1ピッチ目からこの日の最高グレードである。そんなバナナ(最近は高血圧対策で毎日食べてる)。
私は10dを自信をもってOSどころかRPも。。。という気持ちだったので最初から橋本さんに譲る。有無は言わせない。
橋本さんも久しぶりのマルチということもあり結構緊張していたようで、下調べも入念にしており、用意されていたカンペからその緊張感が伝わってきた。
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ニッチモルーファイ中 |
かくいう私はというと、どっちみち行くしかないっていうタイプなので、アルパイン的な思考だったため悪かろうとなんだろうとその場で使うプロテクションは決めればいいな、と思ってたわけである。
なので、どこで何番のカムを使うとかは特に覚えず(何が必要かとかは事前に調査し用意しているわけだが)この地に降り立ったのである。つまり他力本願時というわけだ。
そんな我々の足元にはヒルがうようよしていそうなので、私はディート強めの虫よけスプレーをこれでもかというほど振りかけていたので問題ナシゴレンでした。
8時11分、スタート。
さて、登攀の方はというと、まず離陸核心。ちょい湿っている感じで被り。ガバ感があるが、絶妙なガバで決していいとはいえない。
勢いよくえいやといってテンポよく数手伸ばしていくのがよさそう。その先は左上していく感じ。絶妙に悪い手もあり、朝一で登るにはメンタル的にも辛い。ボルト間隔も決して短いわけではないのでルーファイしながら慎重にかつスピーディーに登るのがよさそう。
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ニッチモ1p目 |
傾斜も結構あるのに、時間をかけつつもなんだかんだOSする橋本さん。さすが。
かくいう私は離陸からもうだけ。にっちもさっちもいかない。。。ダメすぎる。何度かやり直してるうちにパンピングアイアン。オワタ。脚も結構きつくなった。
トラバースではボルト間隔が遠いのもあって落ちたら振られて、しかも傾斜壁。どうしろっちゅうねん。数十分格闘したりして、時間かけてる場合でもないのでユマーリング大作戦するも、時既にお寿司。全身疲れ切っていてなかなか進むこともできず。。。
リードより時間をかけて登ったのでした。
10時39分、フォロー登攀終了。二人合わせて実に2時間半もかかってしまったのである。反省会不可避。
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ニッチモ1p目終了点 |
これによって私のメンタル(身体もだが)は完全にやられて意気消沈。なかなかに落ち込んだわけですが。。。
あ、レストポイントはぼちぼちあるので焦らずに登るのがよさそうです。私ですか?フォローなのに焦ってしかいないよ。
2P目:がんちゃん、20m、5.6、OS
1ピッチ目で完全にやられた私。この後出てくる5.10cピッチをやろうかなと思っていたが完全にやる気を失う。。。というわけで気を取り直して2ピッチ目を。
グレードこそ高くないがランナウトピッチなので慎重に。まぁアルパインでランナウトはつきものなので、マルチもアルパインチックなのも、そもそも”山”が久しぶりな(BCスキーで右ひざの内側側副靭帯断裂していたということもあり)私であったが、楽しめた。
序盤に小さめのカム1つと、途中でボルトがあったような気がする。ブッシュをちょっとかき分け左上していったが、なるべく下からトラバースすればそんなことしなくてもよさそう。まぁプロテクションはわざわざ取らなくもいいぐらいの感じ。
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ニッチモ2p目から見下ろす |
ちなみにどの靴を持っていくか悩みに悩んだ結果、普段マルチで使っているBDのジェネレーターMID・・・ではなくスカルパのインティンクトにした。インスティンクトでめっちゃ登れる!!って感じはいつもはないのだが、まぁなんとなくである。ジェネレーターは細かい足さばきができないので。。。インティンクト商品説明にマルチにもGOODって書いてるしね!
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ニッチモ2p目終了点 |
3P目:橋本さん、35m、5.10c、OS
細かめのフェイスな感じで、ボルト間隔が短いので前半で疲れた心身に染み渡るピッチ。
前半のカンテ右側から入っていき左に進んでいく。中盤から後半にかけてのトラバースパートが怖く核心だと思われる。まぁボルトがあるのでオブザベして躊躇せずムーブを起こしていけば問題ないと思われます。
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ニッチモ3p目 |
まぁまぁ気持ちいこの日の精神安定剤ピッチ。
4P目:がんちゃん、35m、5.10a、OS
ガバで傾斜が強めのやつ。私は強傾斜嫌いマンである。できれば垂壁カチがいい。パワーとかボルダーだとかそういう言葉が嫌いなのだ。ボルダーやってないし。。。
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ニッチモ4p目 |
岩は全体的になんか汚い感じである。。岩苔多すぎコケコッコー共和国。ボルトは9個ぐらい?スラブとチョイハング。チョイハングで珍しくヒールなんか使っちゃったりして。意外とできたのである。実践大事。
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ニッチモ4p目を見下ろす |
登攀詳細:不行岳南東壁 サッチモ 3p、80m、5.10c
終了点からちょいと歩いて三峰のピークで休憩。不行岳をみながらルーファイ。弓状クラックを登ってるPTが見えた。
適当に20mほど懸垂し不行岳へ。クライムダウンもまぁできると思います。そこから3分ほど登り返せばサッチモ取りつき。
1P目:がんちゃん、25m、5.10b
サッチモは2ピッチ目が核心ピッチとなる。当初はそこをリードしたかったが、今日の調子ではメンタル的にもなかなか。。。せっかくならチームOSを狙いたいので1ピッチ目を担当することに。完全に日和ったが、それでも5.10bだしめっちゃランナウトしてるのが目に見てわかるし、ルートの内容的に全く気を抜けない。
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サッチモ1p目 |
出だしはちょい左寄りから、右に上がっていく。お花がかわいいが1ピン目が遠い。遠すぎる。
もちろん2ピン目3ピン目も遠く、4ピン目ぐらいまでは落ちたら余裕でグラウンドできそう。。
2ピン目のすぐ上で下向きクラックにZ4の#0.3をきめられた。精神安定剤。
岩は脆く、ポロポロ逝く場所も多い。フットホールドも見事に欠けていくので、手も足もめちゃくちゃ慎重に1つずつ進めていった。
唸りながらじりじりと、かつ慎重に。かなり集中して手も足も使えたと思う。本当に怖かった。ランナウト、ルーファイ、ホールドチョイス。4ピン目周辺から逆層スラブが顕著になり緊張する。
4ピン目、草付きポケットをホジホジしていい具合に#1をきめられた。これはナイスカム。私でなければ見逃していたであろう!!5ピン目のボルトを取りほっとした。
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ホジホジ#1 |
その先も半刺さりハーケンやリングボルトなど、なんじゃこりゃなんじゃこりゃで進んでいく。ピンチ持ちが色々出てくる。
剥がれそうな大きいフレークをコンコンする。心臓に悪い軽い音が聞こえる。軽いのは男だけでいい。フットホールドが飛んで滑り落ちそうになった。飛ぶのはアレだけでいい。
ランナウト祭りにいろんな要素が詰まっていた。
ニッチモサッチモというよりは、アッチモコッチモである。
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フォロー |
なんとかOSできてほっとした。終了点は2つぐらい選べそうだ。
2P目:橋本さん、25m、5.10c
まずは出だしのルート取り。左から?右から?今回は左寄りで。
ボルトとハング前の怪しいリングボルトでランナーを取ったのち、右に戻ってハング越え。
他の方の記録ではハング前でカムを・・・とありますが、ウーン、いまいちまともに決まりそうなのはないのでは?といった感じ。使えないこともないけど。
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ハングの白い箇所は脆く、左から入ったのでトラバースが大変だった |
そもそもハング周辺の岩がもろくちょいちょちポロ欠けしたりする。
ハングをパワーーー。それなりにガバはあり、一気に乗り上がれば腕とかでなんとかホールドできるので、声を出して越えましょう。越えたらいやらしいスラブパートが待ち受けてるのでじわりじわりと進みます。
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サッチモ2p目は左から入った |
3P目:がんちゃん、30m、5.6、OS
ウィニングランとはいえ、ランナウトピッチなので油断はできない。
リングボルトがあるっぽい。
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サッチモ3pウイニングラン |
というか25mぐらいで終了点があるが、その先もⅢ級ぐらいのぼろい感じの壁。途中で切るのも面倒だし、微妙なとこをフリーで歩くのも。。と思ったので、切らずにそのまま伸ばしてほぼ50mで立木でエンド。
登ってみたらちゃんとボロ壁だったのでロープは重いけど出しててもいいなと思いました。まぁランナー取ってないんでフォローが助かるだけなんですけど。
16時9分、フォロー登攀終了。
これで終了。無事にチームOSできた!!
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頑張ったなぁ。。 |
その後、大天井岳、ゆきぴこ山頂16時半。登山道へと歩き虹が滝を経由して火照った身体を冷まして下山。下山も面倒でしたがな。ああ、膝に結構ダメージきたなぁ。
完走した感想
ニッチモ、サッチモはどちらもグレード的にはいわゆる登れるクライマー(登れるクライマーとはいったい何なのか、その謎を探るべく我々はアマゾンの奥地へと)にとっては高いものではないが(私的には十分大変なグレードのマルチピッチルートなのだが)、登ってみるとオンサイトの難しさ、ルーファイ(あえてオブザベとは言わない)の面白さや重要さ、そこからくるスポートルートにはない充実感(ストレスともいう)があった。
カッコでの補足説明大杉谷。
10台のマルチといってもまったく油断はできず、絶対に落ちられないという緊張感があり、それが逆に心地よく(ドMではありません)達成感があった。
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曇りで暑過ぎずちょうどよかった |
ケガをしてから、しばらく山に行けず、長距離歩くのもいまいちで、まだままだ右膝の違和感は残っており、こいつとあと半年ぐらいは付き合うのかなぁと思いモヤモヤしていた。そんな中でシブコーさんの投稿でこのルートを知り、久しぶりにマルチというかアルパインというか山というか。。。そんな気持ちになって橋本さんに声を掛けたら少し躊躇しながらも(多分梅干を食べてる時のような酸っぱい顔をしていたはずだ)即OKしてくれたので嬉しかった。
あとは緩くなってるボルトがいくつか見受けられました。ニッチモ1ピッチ目の中間部とか。私は工具を持ってなかったので手で軽く回してるだけですので登られる方は十分ご注意ください&スパナとか持って行って締めていただけるといいかもしれません。
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ロープバッグ |
あ、そういえば今回は福本謹製のマルチ用ロープバッグを2つ持ってきたので橋本さんにも使ってもらいましたが(2つセットで使うのがベスト)、なかなか都合がよかったです。既製品だとエー〇ルリッドのティ〇ットという製品です。エーデルリッドのティリットですね、わかります。もうちょい入り口が広かったら入れやすいのだろうか。既製品の入り口の大きさが気になるところ。
よかったらYoutube(がんちゃんねる)も見てください。
あとついでに最近は写真を撮るのにハマっているので、インスタなんかもフォローしたりコメントしてもらえると嬉しいです。
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