[アルパイン]笠ヶ岳 四ノ沢 ピナクル東南壁 五月晴れルート 2025/10/12-13

2025/10/15

2025年 アルパイン クライミング テント泊山行 山行記録 登山 北アルプス 無雪期

t f B! P L

そろそろアルパイン復帰してもいいですか

腰が痛い。

当初予定していた9月の連休。
2週間前にこの山行のために体力づくりにと思い出かけたソロテン泊。
駐車場まであと5分というところで渡渉。ああ、滑るだろうなと思って出した1歩が滑った。
普段からギャグは滑りまくっているが、尻もちをついた瞬間電流が走る。

走馬灯のように、ああここは電波無いな、遭難かな。脊椎大丈夫かな。折れてないかな。とかぐるぐる頭の中を駆け巡り、悶え、ああ水が冷たくて気持ちいいな、気を失ったら溺水するかな、水ないとこに転がらなきゃ、でも水が冷たくて気持ちいな、呼吸整えよう、全然動けねぇ、ザック下ろそう。と頭の中をぐるぐるとしていた。

数分が経ち、なんとかザックを下ろし、落ち着いてゆっくり周りの状況を見て自分の荷物もロストしていないか確認する。カメラも大丈夫そうだ。GoProは転がってたけど。

重い荷物を背負い、少しずつなんとか立ち上がりよぼよぼと駐車場に向かう。
こうしてぎっくり腰となったわけだ。

そういや今シーズンの夏はアルパインしてないな、どっか行きたいなと思い見つけたのが今回の笠ヶ岳にある五月晴れルート。笠ヶ岳といえば私が好きな錫杖岳のお隣さんではあるが、このルート含め記録は少な目。どちらかというとアプローチなどが悪いようだ。

お隣の錫杖は何度か登っているが、なんだかんだ笠ヶ岳のバリエーション、クライミングルートは登っていないのでちょうどいい。楽しそうだというわけでむらっち召喚!

そんなこんなでヨボヨボしながらアルパイン復帰させていただきたいと思います。
なんてことを考えていた9月半ば。天候悪く中止。ああ諸行無常。

翌週も天候がだめ。

あきらめきれずに10月の3連休を抑える。

むらっちは海外に逃亡していた。どうやらタスマニア旅行に行くらしい。

というわけで岩瀬た!召喚!!
最近体力が~とか言いつつ一瞬渋ったが煽ってOKさせた。チョロイ。

山行概要

日程:2025年10月12日~13日

天気:おおむね曇り

山行形態:悪パイン

メンバー:がんちゃん、岩瀬た


装備

主な共同装備:50mハーフx2、カム(0.1~4)x2と#5/#6を1つ、オフセットナッツx1、アルヌンx10


山行詳細

<1日目:アプローチ>

前日まで台風22号が接近していて不安だった天気もまあなんとかなった。なんなら台風一過で晴天じゃないか!というのを望んでいたわけだが。ついでに23号とかもうやめてくれって感じ。

はてさてグッドモーニングショーで7時スタート。3連休ということもあり、駐車場(特に無料)は争奪戦だろうなと思い、鍋平の上のとこに停めようと思い調べていたら、詳しくはよくわかっていないが一部は予約(有料)となっていた。

前日まではキャンセル料がかからないようなので、とりあえず2日分(2000円)を予約しておいた。早く行けば(前日の夕方とかか?)ワンチャン無料で停められるのかもしれないが、そんなリスクは背負いたくない。2日で2000円なら高くもないしまぁいいだろう。たぶん私の時給ぐらいだ。しらんけど。で、結局、下界の無料のとこに停めることができた。

そうこうしながら、穴毛谷って変な名前だなと思いつつ1日目はアプローチ。毛穴よりかはましかと思ったが、それ以上に10月も半ばなので雪渓の状態がとても心配である。きっとズタボロになっていて大変だろうな。。。ちなみに名前の由来はあれらしい。

堰堤を右岸側から上がる

恐らくワールドベストな蒲田川左俣林道を進んでP1341mあたりの堰堤に降りて渡渉し右岸側から越える。一ノ沢と二ノ沢への間へと飛び出す。渡渉のため裸足になる。気持ちがいい。

時折渡渉する

そこから穴毛谷を1時間半ほどひたすら進む。荷物が重い。時折渡渉。

四ノ沢も通り過ぎずっと進めば穴毛大滝だが今回はそっちじゃない。しかし、四ノ沢の分岐から10分ほどいけば、穴毛谷の名前の由来となった穴毛岩が見られるとのことでザックをデポして見に行くことに。昔は穴毛谷は笠ヶ岳登山の一般ルートだったのでこの岩を見た人も多いのかもしれない。

セクシーな穴毛岩、ぽっかり穴があいている(上は空洞)

穴毛大滝を遠望

なるほどえっちい形をしている。そこからもう少しいけば穴毛大滝(の上半分)も遠望することができた。

さてさて、我々の目指すピナクルは四ノ沢である。アイゼンも持ってきていたが、まともな雪渓はなさそうだ。1時間ほど四ノ沢を進むと二又へ。そこから左又へ入っていく。

雪渓がわずかに残る二又と雲に隠れるピナクル

もともとテン場は過去の記録を参考にし取り付きの近くのCol2300mあたりの予定だった。2テンがギリギリ張れる感じらしい。

しかし二又ですぐに滝が現れ足場も悪そうだ。荷物も重いしよさげなところで(無い)テントを張ることにした。で、なんとか微妙なところを整地したら意外といい宿になった。横に大きな雪渓が横たわっていたが、それ以外は特になさそうだ。水は滝から十分に確保できた。

今回は前室が無い小さめテントであるところのBDハイライトを持ってきた。コンパクト。多少軽いが、快適さは・・・。

本気で整地した

意外と快適になった

そもそも結構古いテントなのでそれほど軽くはないのだ・・・(1.4kgぐらい)。マイチェンもされているが、ロストアローからは消される始末。私が買った初めてのテントという思い入れのあるテントだが、昨今のテントに比べてまぁ重い&狭いので出番は少ない。アルパインシェルターとしては秀逸だと思うのだが。。。

第一岩稜とピナクルでしょう?

完全メシに乾燥野菜を増すのがマイブーム

ドローンを飛ばしてアプローチの偵察をしつつ夕ご飯を食べ終え、18時ごろには寝床につく。すんなり意識を飛ばせたが暑さのせいか2時間ほどで目が覚めた。冬シュラフにダウン上下はオーバースペックだった。軽く脱いで寝ることにした。全裸にはなっていないが全裸シュラフは結構気持ちがいいことを私は知っている。

アーベントロートな穂高連峰

入口側の岩瀬たがテントの入り口を全開にした。熊がやってこないかちょっと心配になった。その後なかなか寝付けず、何度かお花を摘み、ようやく眠りにつくことができた。いつもこうだ。

<2日目:五月晴れ>

グッドモーニングショー。取り付きまでちんたら行って2時間半ぐらいはかかるだろうと見込み、日の出とともに登攀だ!!と思い、3時出発のつもりがアラームが鳴っていないのか2時40分ぐらいに起きた。なぜなのか。

岩瀬たは私に気を使ってか外で食事をしていた。寒いだろうに。

大阪万博日本館でもらったミソスープうまい

3時49分行動開始。

二又から先の足場がとにかく悪い。こんなところをテン泊装備で行く人は気が狂っていると思うぐらいである。しばらく進むと多少はまマシになったがそれでもガレガレである。
二又をテン場にして正解だった。下りのことを考えると憂鬱になる。

途中まだ暗いし取り付きにすぐ着きそうということで標高2090mらへんの適当なところで横になることにした。30分ぐらい仮眠しただろうか。月明りだけでなく、太陽が昇ってきたのがわかる。あたりが青く明るくなりはじめていた。

地形図をみながら取り付きを目指す。標高2250mあたりに岩壁のマークがあるのはわかっていたが、まぁ回り込めばいけるだろうと高をくくり東側に入りすぎてしまう。悪い場所を登るハメに。。。

岩瀬たに先を見てもらったが微妙なので念のため上からロープを出してもらう。謎の1ピッチ目完了、岩がボロボロすぎる。で、そこから左方向に入っていけば。。。と思い謎のボロボロ2ピッチ目をそのまま私が担当。まだ合流できていなさそう。3ピッチ目岩瀬たに進んでもらい、そこから左に左に歩いてなんとかかんとかピナクルのルート横あたりに出ることができた。

多分アプローチ3ピッチ目

本来の1ピッチ目の途中右あたりに出てしまったようだが、まぁ細かいことを気にしても仕方ないのでここからスタート!ということになった。ワカチコワカチコ。

1ピッチ目:岩瀬た、Ⅲ、40m
男気じゃんけんにより勝者の岩瀬たが1ピッチ目担当となった。出だしからなんか悪い。
7時10分。恐らく本来の1ピッチ目の右上らへんからスターティン。いやでも正しい気もするし、どこでもOKでしょという気持ちでいいと思う。

1ピッチ目、下に本来の取り付きテラスが見えた・・・

2ピッチ目:がんちゃん、Ⅳ、40m
どうやって登ったのか本当に記憶がないが簡単だったのだろうか。。。草付きやスラブを登っていく感じだっただろうか。アルパインって感じ。

9時26分、ちょっと便りのない灌木に残置がいくつか。信用ならないので左の大きなクラックに#6を突っ込み進んで3ピッチ目のクラック出だしにカムを3つぶち込んでピッチを切った。

2ピッチ目終了点

ああきれいだ。

3ピッチ目:岩瀬た、5.10a、35m、ダブルクラック右

出だしは見た目的に問題なさそうだが意外と悪いようだ。その先はダブルクラックとなっており右側が快適なハンドクラックという噂。噂。

ほんまに快適か?という感じで、ある意味グレード通りのしっかりしたクラックで今の我々には強敵だった。

3ピッチ目出だし

岩瀬たは打ちのめされて、テンテンで登っていった。フォローの私は時間短縮のためカムエイド、ユマーリングを駆使してとにかく早く登ることを心掛けた。しんどすぎる。自分の登攀力の低さにガックリしたが、当然の結果だろう。でもまぁ登れる人にとってはすっきりとしたクライミングピッチで、気持ちのいい登攀となるだろう。

3ピッチ目上部ハンドクラック(右側)

4ピッチ目:がんちゃん、5.7、35m、ワイド~ブッシュ岩稜

3ピッチ目の終了点から少し上がり右に行くとワイドが現れる。

ワイドなんて普段やってない私には荷が重い。目の前に立ち頭を悩ませる。ちょっと上がって大きく口を開けたクラックに6番をぶち込む。身体が軽くなる。

どうやって身体をつっこめばいいのかよくわからないが、なんかガバありそうだしがんばる。ずりずり這い上がりそのあとはブッシュ。

4ピッチ目ワイドに差し掛かる

本当にうっとうしいブッシュをかき分けて登っていく。
5ピッチ目のピナクルピークの手前に残置のかかった大木があるのでそこでピッチを切った。ロープが重い。とにかく重い。地獄のロープアップが始まった。2本一気に上げるのがきつすぎて、交互に少しずつ引っ張りあげた。

5ピッチ目:岩瀬た、5.9、35m、ワイドクラック
あたりはすっかりガスに包まれていた。霧雨。岩がびしょびしょということではないが、少し肌寒くなってきていた。

ここまで来たので折角ならトップアウトしたい。ということで岩瀬たに託す。時間は押していたがまぁ大丈夫だろう。

5ピッチ目右から

短い3本のクラックが見える。トポでは真ん中を登るらしいが、右が簡単そうなので悩まず右をチョイス。その先は簡単でズンドコ進むことができる。

5ピッチ目終了点

さっくり登って大岩にまかれた残置で終了。トップアウト。まだ先にブッシュがあり、その先が本来のピークだろうがそんなものはどうでもいい。戻るの面倒そうだし。というわけでさっくり懸垂しましょう。

デプローチ

4ピッチ目からの懸垂、私が足場について上を見上げるとオレンジのロープの一部がささくれているように見えた。びっくりした。次に降りてくる岩瀬たに下降途中で確認してもらったら案の定外皮が切れてコアが数センチむき出しになっているようだった。

ひとまず岩に擦れないように慎重に降りてもらい作戦会議。ダクトテープを巻けば懸垂なら何とか大丈夫か?などと話しながらロープを引いた。

ロープトラブルに見舞われる

どこかでひっかかったのが外皮がさらに引かれて50センチほどコアがむき出しになってしまった。幸いコアは無事そうであるが困った困った島倉千代子。この先もまだ30m以上の懸垂が見込まれる。ロープ1本だとかなり厳しそうだ。岩瀬たはこのままでもいけるだろって感じだったが、さすがにこのまま懸垂は絶対したくない。

というわけで結び目をつくって、バックアップ2本で懸垂して結び目通過作戦をすることにした。恐らく大丈夫だろうと分かっていても怖いものだ。その後4回ほど懸垂をしたが、懸垂のための立木探しにも苦労した。

16時44分、本来の取り付きらしきところまで降りてきた。そこからもクライムダウンはできるがちょっと足場が悪そう。よく探すと2本のハーケンと残置が。ちょっと怪しいが確かめてから懸垂。

大きな岩も、小さな岩も全部がゴロゴロ動く。登りとは違うラインで慎重に下る。

17時46分、テン場へと戻ってきた。まずは一安心。薄暗くなった霧雨のなかそそくさとテントを片付ける。

そこから先は無心になってひたすら下る。びちゃびちゃの藪をかき分けたりした。気づいたら四ノ沢を抜け、本流へと合流していた。不思議なものだ。ルーファイはほぼ岩瀬たに任せた。ありがとう。

堰堤までたどり着いたらかなり気が楽になった。林道歩きは天国のようだった。全身びちょびちょだったので帰りの渡渉は適当に突っ込んだ。もちろん靴なんて脱ぐはずがなかった。

<完走した感想>

何よりも大変だったのはアプローチ(とデプローチ)である。特に四ノ沢の二又以降が絶望的に悪く今回の山行の核心といっても過言ではなかった。懸垂も残置(というか立木)がどのあたりにあるか探しながらの対処となったのでそれまた大変である。

登攀は5.10bとそれなりのグレードのピッチもあり自分にはまだ。。。ワイドも普段やっていないのでとにかく大変だった。そしてどのピッチも岩が脆いことが多く、とにかく落石には気を付けた。

このルートを楽しむためには全てのアルパイン要素で強くならないといけないなと思った。特に我々は登攀力が足りていなかったと反省。それ以外はトラブルにも冷静にうまく対処でき、いいアルパインだったなと感じる。

心配していた腰と4月にやった膝はなんとか持ちこたえてくれたのでよかった。いや、腰は最後には終わってたが。。

久しぶりのアルパインで充実感達成感モリモリで、これでようやく真夏のピークが去ったと天気予報士がテレビで言ってもよいだろうと思ったのでした。Winterはよこいって感じです。

とにもかくにも心身共に疲れたのでした。無事に生きて帰れてよかった。感謝。

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