剱岳の初級バリエーションルートに挑む
たまさん・あーれすさんと計画していたGW、そして8月前半の剱岳源次郎尾根、どちらも悪天候により中止となった(8月に関しては結果的には晴天ではあったが)。
ミッチェル氏と予定していたお盆の沢(甲川)の予定もキャンセルになり、悶々とする日々を過ごす。天気予報を眺めながら台風が過ぎた12日アタックならなんとか行けそう、午後から翌日にかけては荒れそうだなんて思いながらアタックすることを決めた。本当は4日ぐらい滞在して北方稜線もやりたかったが天気が悪い中、連日こなすのはしんどい。ならば源次郎尾根だけでもやってやろうじゃないか。
源次郎尾根単独アタックの記録
日程:2021年8月11日~2021年8月13日
山行形態:テント泊
メンバー:がんちゃん
主な装備:懸垂セット(50mダブルロープx1本)
1日目:室堂~剱沢キャンプ場
今回はソロなので現地までは夜行バス(大阪~富山)で行き、電鉄富山で立山駅まで。あとはおなじみのアルペンルートで室堂まで。余裕をもって10時立山発を予約していたが、早朝の富山駅でやることはなく7時過ぎには立山駅に着いてしまった。
さてどうしようか、予約したケーブルカーの乗車時間から早められるかな?とスタッフに聞いたところ団体窓口で可能であるとのこと。早速、団体用の窓口(1番)に並び(個人用はクソ並んでいる)時間を変更してもらうことに。流石に直近の時間に変更はできなかったが9時発に変更することができた。着替えたりして1時間ちょっと時間を潰す。
気が付いたら室堂についていた。水は立山玉殿の水が湧いているのでそこで補給する。補給して重くなったザックが辛い。水を入れる前で21kgほどあったので20kg前半だろうか。久しぶりの重量なのでただただ辛かった。
右岸尾根から |
雷鳥沢から剱御前小舎までは最もポピュラーな左岸側の尾根ではなく、右岸側の尾根から登った。私はこちらの方が好きである。右岸側の方が若干距離が長く、コースタイムも5~10分ほど長いはずだが斜度が比較的一定で登りやすい。心なしか雷鳥も多い気がするが、今回は出会うことが出来なかった。
明日のぼる源次郎尾根をチェック |
そうこうして剱沢キャンプ場に着いたので早速テント設営。2人用テント(BD
ハイライト)のテントポールのゴムが伸び切っており設営が手間取るので、今回は3人用テント(ダンロップVS-30)を持ってきた。広すぎる、贅沢だと思ったが、悪天が予想されダブルウォール&底が分厚いこいつでよかったなと後で思うわけであった。
2日目:剱沢キャンプ場~源次郎尾根~剱岳~別山尾根~剱沢キャンプ場
開始:4時35分
終了:12時5分
山行時間:7時間30分
天気予報では午後から崩れる予定だったので午前中にキャンプ場まで帰ってくる行程で予定を立てる。山頂までは6時間、下りは別山尾根で3時間の合計9時間あれば十分だろうということで、3時半に出れば12時頃にはテント場に帰ってこれるはずだ。
気温はそれほど高くなく、ほどほどに軽量化したかったため水分はハイドレーションに約1リットルの水、ナルゲン500mlに粉末ポカリを溶かし、デカビタ500ml1本の合計約2リットルとした。ちょっと少ない気もしたが最終的には剣山荘手前までもった。
ということで少し明るくなった4時半ごろにハーネスを装着しテント場を出発(なぜか二度寝している)、足早に源次郎尾根の取り付きへと向かうが剱沢小屋あたりで早速道を間違え時間をロスする。剱沢右岸の夏道はザレザレで結構悪い。夏道が雪渓で途絶えるところでアイゼンを履いた。
剱沢雪渓は事前の情報でチェーンアイゼンで問題なさそうだったので、軽量化と着脱スピードを考慮し今回は爪があるタイプのチェーンアイゼンにした。前日の夜に少し雨が降った影響もあるだろうか、雪は少しシャーベット状だがチェーンアイゼンで十分だった。ピッケルも不要。ロスした時間を取り戻すべく小走りで一気に下っていく。テント場から45分で平蔵谷と交わる源次郎尾根の取り付きへと辿り着いた。時間は5時15分。あたりはすっかり明るくなっていた。
取りつきでは若者3人の1PTが準備中だった。チェーンアイゼンをさっと外して先に行かせてもらった。序盤は草付で踏み跡は明瞭なのだが、間違った踏み跡も割としっかりついているようで、若干左に進んでいってしまうと間違った道のようだ。最初から斜度が結構きつく、心拍数がかなり上がった。天気は曇りで気温もそれほど高くないが汗の量がすごい。なかなか調子が乗らない体に一抹の不安を覚える。汗に焦りながら水分補給をするが、2リットルしか持っていないので飲み過ぎないように気を付ける。晴天だったら2リットルじゃとても足りないだろう。
幾度となく藪や木やハイマツの根をを越え行き詰りながら右へ右へとルートを修正し、やっとしっかりとした踏み跡に戻ってくることが出来た。
源次郎尾根はルート全般を通してペンキマークやリボンなどの道標は無い(はずだ)が、剱岳のバリエーションルートとしては入門で人気が高いため、踏み跡は相当しっかりしている。よっぽどのことが無い限り大きくルートミスすることはないと思われるので、ルーファイに関しては序盤の草付きが核心だろうか。といってもやはり剱のバリエーション、細かい所はどこを通るかで難易度(リスク)や疲労感は大きく変化するため慎重に判断する必要がある。
尾根を振り返ると剱沢雪渓が垣間見える |
なかなかしんどく心拍数が高くペースが上がらない感覚に焦りを覚える。しばらく草木を掻き分け進むと取り付きから45分ほどでようやくクライミング要素のある最初の岩場に突き当たった。後続だったはずのPTがちょうど登っている最中であった。今回はソロなので人がいると少し安堵する。事前情報ではこの前に1つ岩場があるはずだが登った記憶がない。巻いたのだろうか?
ハーケンのある岩場が序盤の核心か |
さて、この岩場は体感的にはⅢぐらいのグレードだが左下が切れ落ちているので絶対に落ちれない。下部と中段にハーケンが打ってあるので不安な場合はセルフなどを取りながら登るといいだろう。私はスリングとセルフ(ペツルのコネクトアジャストが超絶便利)を組み合わせ攀じ登った。回収がちょっと大変だがなんとかなった。ぼーっとしていたのか残念なことにこの時に回収したスリングとカラビナを落としてしまった。。。ソロでない場合はロープを出さないにしても、長めのお助け紐などがあると後続がスムーズに登れるかと思う。
Ⅰ峰? |
序盤の岩場を越えると徐々に尾根が開け視界も良くなってくる。ここまでで結構体力を消耗した感じがあり、ペースが上がらないようにも思えたが時間的にはまだ余裕そうなので焦らずゆっくり着実に進んでいく。取りつきから2時間45分ほどでⅠ峰へと辿り着く。途中でキジを撃ったりした割には悪くないペースだ。時間は7時15分。
Ⅰ峰からⅡ峰へ一旦少し下り登り返す。ここから先は特筆する登りは特にないが、簡単なスラブがあったりで楽しんで登ることが出来た。
Ⅱ峰の登り |
晴天であれば迫りくる峰々と景色を楽しめるのだろうが、天候は徐々に悪化していった。時折雨がパラついたが、岩が濡れて滑るほどではなかったのが幸いだ。時折見える八ツ峰が美しい。
Ⅱ峰八ツ峰方面(のはず) |
Ⅱ峰の頂上少し先では懸垂下降が待っている。先行PTが降りるのを待ちながら少し休憩。若干被り気味で真下は見えない。ロープは50m1本で下降したが、最下部までは届かないが3m程度上部のテラスまでは十分に届いた。テラスからは容易にクライムダウンが可能で(少なくとも源次郎を登るのであればこれぐらいのクライムダウンはできないと話にならないというレベル)、今回は使っていないが端っこにお助け紐もぶら下がっていた。中間部にも綺麗なラッペルリングがあったので最悪30~40mのロープでも下降できそうではあった。
Ⅱ峰の先にある懸垂支点 |
Ⅱ峰の懸垂ポイントを見上げる |
Ⅱ峰を下れば山頂まではもう少し。疲れも溜まってきているので一歩一歩確実に進んでゆく。本峰が見えればそれを目印に進めるがあいにくガスの中。比較的広範囲に踏み跡がついているのであまり適当に進み過ぎるとロスが大きい。
下降点から1時間ほど登り山頂直下のガレ場を詰めれば9時半、取りつきから4時間半で祠が現れる。想定より早いタイムで満足しつつも展望が無いことにがっかりした。同じく源次郎尾根を登った先行PTと少し言葉を交わし、雨が強くなる前に別山尾根で下山することとした。先行PTは北方稜線で下るようだ。
やりましたよ、源次郎尾根。
10年前の8月、初めて剱岳に登った。まさかその時は自分がこんなルートを登るなんて夢にも思っていなかっただろう。 |
登頂 |
下山はただただダルかった。少し雨がぱらつき濡れた岩と鎖が嫌らしく、そもそも前剱や一服剱を登り返さないといけないのだ。下山なのになぜピークを2度も登らないといけないのだとブツブツ文句をたれながら、残り少ない水の心配をしつつ足早に下っていった。そして水は剣山荘で尽きた。
テント場には12時5分、スタートしてちょうど7時間半で辿り着いた。戻るまで天気は何とか持ちこたえたが直後に雨脚が強くなってきた。夜は暴風雨となり、テントの下は川の様相でテントごと自分自身が飛ばされるかと思った。
3日目:剱沢キャンプ場~室堂
室堂始発に乗りたかったがやはり眠い。2便を狙って二度寝する。ちょうど雨脚が弱まったタイミングでテントを撤収し下山する。下山と言っても剣御前までと、雷鳥平から室堂までの2度登らないといけない。ここでもまたブツブツと文句を言いながらダルそうに歩いた。
感想
実はソロでのテント泊は初めてだった。だからどうというわけではないが、やはり荷物を分散できないので重い。分散したところで大して変わらないかもしれないが。ロープは懸垂下降するだけなら補助ロープが欲しいなと思った。これまでのテント泊で荒天は幾度となく経験してきたので雨対策は特に問題なかったと思われる。
残念ながら天候に恵まれなかった |
ここ最近は重い荷物を背負っていなかったため、若干の不安はあったものの一人で剱岳のバリエーションを大きなミスすることなくクリアできたため大きな達成感や自信につながったように思う。ただ天候がイマイチだったので登頂した時の感動が薄れたような気はする。また、ソロだったので若干の寂しさはあったが、上手い具合に先行PTが見える範囲にいたのはルーファイ云々よりも精神的な余裕に繋がったように感じる。
逆に言うと序盤からのペースを上げられない感覚やしんどさがあったので、同行者がいないことでマイペースに行けたのは結果的には良かったのかもしれない。同行者がいたら逆に弱さが出て足が止まっていたかもしれない。取りつきの偵察は出来ればしておいた方がいいが、登り返しが面倒だと思った。
次はどこの山に登ろうか。剱岳なら八ツ峰や北方稜線を登りたいな。
以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。
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