錫杖岳の名ルートを登ってみた。
一般登山者にはあまり馴染みは無いがクライマーにとっては名ルートも多く、日帰りでもアルパインクライミングを楽しめるアプローチがそこそこ近い山。それが2168mの錫杖岳。標高は「兄さんむっつりやん」、と覚えてください。微妙?
そんなむっつりでスケベェな様相を呈した(どちらかというとどっしりとしていてカッコいいとは思うが)錫杖岳の1番(当社調べ)有名なルートともいえる烏帽子岩の前衛壁北沢側フランケ「注文の多い料理店」。
以前から興味はあったのだが、自分の登攀力的にまだまだかなぁと思っていた。しかし、最近はまぁそこそこ登れるし今なら十分楽しめるだろうと思い計画。ルート名も妙に魅力的なのがこの錫杖岳。そうとなれば新穂高まで折角行くので(槍、滝谷と最近よく通ってるように思えるが)、1日だけとは言わず2日間楽しもうということに。
当初は岩舎でテント泊!と思っていたが、今回のパートナー二人がまともにテント泊をした事が無かったという事もあり(こういう時こそやってみるべきだとは思うが)、提案はしたものの宿泊は下界と相成りました。本当に根性の無い奴らだ。
はてさて、そうこうして2日目のルートは「見張り塔からずっと」へ。どこに見張り塔があるのかは分からないが、前衛壁左端にある北沢大滝の横から長い岸壁を登り、さらに草付の斜面から本峰フェース、草付のルンゼを経て山頂に詰めあげる10ピッチ強のオールフリー、ナチュラルプロテクション主体のルートなのです。
錫杖の有名ルートといえば他にも「1ルンゼ」や「左方カンテ」もあったのだが、私はどうしても見張り塔に登り、下界を見張りたかったのです。
なぜなら、このルートの冬季版ともいえる「北沢大滝~本峰正面ルンゼ」を2月に登っておりこれがとても楽しく、いずれは無雪期にも登ってみたいなと考えていたからだというのはここだけの話。見張り塔は注文より少し登攀グレードは高いが、今の私なら・・・という事で提案したのでした。
そもそも錫杖岳にはこれまでこの1回しか登っておらず、無雪期は初めてなので、私の無雪期錫杖童〇はこの機に卒業する事になるのでした。ちなみに来年2024年は注文の多い料理店が出版されて100年の記念すべき年なのだ。知らんけど。
山行概要
日程:2023年9月30日~10月1日
天気:おおむね晴れ、2日目は雨
山行形態:マルチピッチクライミング
メンバー:がんちゃん、加藤、二村
駐車場とトイレ
中尾高原口バス停の裏にある無料駐車場に駐車、台数は20台ほど停められるだろうか。トイレは隣の奥飛騨さぼう塾(神通砂防資料館)にあるが、営業は時間は午前9時~午後4時30分(5月から11月)となっているので注意。
山行詳細
<1日目:注文の多い料理店、5.8~5.9、7ピッチ>
ギア
60mハーフロープx2、キャメロット(#0.3~#0.75x1、#1~#5x2)、60cmアルヌンx10、120cmアルヌンx3、その他スリング類
各ピッチを60mまで伸ばせる見張り塔の為に60mロープを持ってきたが、注文は50mで十分だと思われる。
アプローチ
駐車場から錫杖沢出合までは登山口から約1時間ほど歩き、そこからは笠ヶ岳方面に向かうクリヤ沢登山道を歩けばあら不思議。
登山口 |
錫杖沢出合からは、登山道から逸れて左岸の踏み跡(クライマー道)を辿っていきましょう。人の道を歩きたくない人は適当でもいいです。沢でもなんでも使えばいいのです。
ピンクテープ多数 |
クリヤ沢では途中に渡渉があり基本的には岩の上を渡る事ができるが、増水時には埋まっていることもあるので要注意です。濡れるのが好きな人はそのまま突っ込めば梅よろし。
渡渉ポイントの入り口 |
渡渉 |
20分ほど歩くと錫杖岩舎(1張ほどの幕営スペースあり)があり、ここで北沢と錫杖沢に分かれているので進行方向左の北沢を20分程進むと、大きな前衛フェースが現れて我々を迎えてくれました。多分歓迎してるはず。知らんけど。
岩舎? |
前衛フェースが見えてきた |
さらに目と鼻の先に見えている北沢大滝付近までいくと注文の取り付きとなります。
北沢大滝 |
各ピッチは終了点、懸垂用のカラビナ等ありでゲレンデか!となりました。登攀は残置のハーケン、スタックしたカム類はすべて無視でオールナチュプロでいきました(私は)。
注文全景 |
登攀
1P目(Ⅳ、30m):がんちゃんリード。30mほど伸ばして草付きテラスでピッチを切る。1本目なので緊張するが階段状で簡単。
1P目、程よく辛い所を登る |
草付きテラスから |
2P目(5.8、50m):がんちゃんリード。フレーク、クラック、フェースとよりどりみどりで、少し細かいところもあり、枯れ木テラスには行けず、間違えてしあわせ未満の終了点に導かれてしまう。5.8、50mほど。
やらかし未満 |
3P目(Ⅳ、10m):二村リード、本来の2ピッチ目終了点の枯れ木テラスまで。ちょっとクライムダウントラバースからフェース。
枯れ木テラス |
4P目(5.8、20m):二村リード、核心のハングクラック。パワーーーーで登って喘ぐ。狭い狭い地蔵テラスでピッチを切る。サードの私は一段下でハンギングして待つ羽目に。
ハングクラック、パワーこそ力なり |
5P目(5.8、20m):二村リード。気持ちの良い高度感のある広いコーナークラックを登る。広い水平テラスでピッチを切る。しばし休憩、ちくわを食べる。
地蔵テラスから |
水平テラス |
6P目(5.8、40m)︰加藤リード。コーナーのダブルクラック。左方カンテのptが懸垂しているので、終了点手前の灌木でピッチを切る。
登りやすい |
気持ちのいいクラック |
7P目(Ⅳ+、40m)︰出だしのフェースが核心。剥がれそうなフレークを使いつつ、唯一のボルトに命を預ける。そこから直上すると、プロテクションが取りづらい。右に逃げれば簡単そう。直上はマイクロカム2つほどあればいいが、1つでしか取れずその後ランナウトするのをヒヤヒヤしながら眺める。草付きまで行けば後は簡単。
ここ直上ランナウト |
8P目:簡単なのでコンテで上がり前衛フェースの頭に出て装備解除。見張り塔の大洞穴が見えて感動。冬はあそこに登っていたのだな。。と思った。
前衛フェースの頭 |
デプローチ
ロープ2本で同ルート下降。懸垂4ピッチで。そこからは元来た道をダラダラと歩くのみ。何だかんだ取り付きから駐車場まで1時間で下山できました。
懸垂しましょう |
懸垂後死亡 |
翌日は見張り塔を登るので取り付き付近にギア類をデポしたかったが、夜から雨予報だし、翌日どうなるか不明だったのでデポせず。
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