All along the watchtower(見張り塔からずっと、ボブ・ディラン)
1週間前に雨で登れなかった錫杖岳の「見張り塔からずっと」。このルートに登りたかった理由は、前回の注文を登った時のブログに書いているので是非そちらを読んでいただきたい。
3連休の後半(日月)は剱岳のチンネ左稜線を予定していたが、数日前に降雪しぐっと冷えた。それまで天気予報を眺める日々が続いた。てんくらはアホなので占いだと思っている
私自身、寒さ耐性には自信があるので特に問題無いのだが、色々と荷物が増える事や、中途半端に荒天になって撤退になったら嫌だなぁとか、雪の中登りたくないなぁとか、一緒に行くメンバーにそこまで無理させられないなぁとかネガティブになる。少なからず人のせいにしたが、結局は自分のモチベーションがMAXでは無かったのだろう。
そうこうして、悪天の可能性も捨てきれないので(特に登攀日はイマイチだったので)、珍しくすんなりと中止にしたのであった。
そうと決まれば3連休の転戦は1週前に登れなかった「見張り塔」をやりたい。そっち方面に行くなら小川山でクライミングキャンプをしているメンバーがいるので後半戦はそっちに合流しようという事になった。
前回の錫杖メンバーの加藤と二村を誘ってみたが都合が悪いようだったので、小川山メンバーの福本をそそのかした。
そして満を持して、アルバム「ジョン・ウェズリー・ハーディング」発売から55年(1967年12月27日発売)の記念のこの年に、見張り塔の冬版に一緒に登ったなみえどんが空いているというので一行は錫杖岳へと向かったのであった。
尚、このルート名が曲からきているのか、小説「見張り塔からずっと」(1999/8/30、重松清)からきているのかは不明であるが(といいつつHPには英題が書かれていたので曲ベースだろう)、開拓は2002年とのことである(2002年10月12日~13日 石際淳,横山勝丘)。見張り塔とは、大洞穴の上部にあるハング部分を指しているようだ。
余談ですが、石際さんのブログ「blog版がおろ亭」は結構面白いので興味があれば読んでみてください。
山行概要
日程:2023年10月7日
天気:晴れ
山行形態:マルチピッチクライミング
メンバー:がんちゃん、福本、なみえどん
駐車場とトイレ
中尾高原口バス停の裏にある無料駐車場に駐車、台数は20台ほど停められるだろうか。トイレは隣の奥飛騨さぼう塾(神通砂防資料館)にあるが、営業は時間は午前9時~午後4時30分(5月から11月)となっているので注意。トイレは近くの道の駅「奥飛騨温泉郷上宝」などを利用するといいでしょう。休憩所が24時間空いており、無料で飲み水が補充できます。オートキャンプ場もあるようです。
山行詳細
<見張り塔からずっと、5.9、8ピッチ>
アプローチ
注文と同じなので省略。
アプローチ |
ギア
60mハーフロープx2、キャメロット(#0.3~#4、#0.4~#1)、60cmアルヌンx15、120cmアルヌンx3、その他スリング類
山行詳細
駐車場で有田さん池田さんPTと遭遇。どうやら我々と同じく見張り塔に登るらしい。
グッドモーニングショー。色々あって当初計画より1時間遅い6時26分スタートでおはようサンフランシスコ。
登山口から取り付きまでダラダラ行って1時間51分。先行は2人2PT。どうやらライン間違えで左に入ってしまった3人PTもいた(実はお会いしたこと会う人だったりした)。
<下部:北沢大滝>
1P目:福本、50m、福本がリードしたいというので任せる。デシマルグレード(5.6)のアルパインは初なはずなのでウンウン言わされるだろうなと思いながらニヤニヤしながら任せる。フレーク~フェースらしい。カムは取りづらかった模様。終了点はなんかあった残置ハーケンで。
1P目 |
1P目終了点 |
2P目:福本、30mぐらい。テラス状の広めのガレ場でピッチを切る。簡単。
3P目:福本、60m。先行PTがいてうまく終了点を作れないようで結構まった。私がしびれを切らしてフリーで上がってしまう。適当なところで終了点を作り直した。結局時間短縮になったのかは謎。
3P目 |
4P目:なみえどん、50m。直上すると悪いフェースに突き当たる。そこを右にトラバースして直上。そこそこ濡れているので微妙に悪い。ちょっと太めの枝的サムシングでピッチを切る。
4P目の右に回り込むポイント |
そこから大洞穴までは歩き。適当に踏み跡をたどって高度を上げていくとテラス的な草付きがあったので一休み。そこからさらに進むと大洞穴が左手に見えてくる。
一休みポイント |
大洞穴の遠望 |
後は左に踏み跡をトラバースだが特にロープを出す必要も無さそう。大洞穴の下に小さい穴がある。そこら辺を適当に登る。ヌメヌメで微妙に悪いが沢登りで慣れているのでフリーで上がる。福本が微妙そうだったのでロープいる?って聞いてとりあえず出した。
踏み跡をトラバース |
<大洞穴~錫杖岳山頂>
大洞穴で先行2PTが見えていた。登らないのだろうかと思っていたら、べっちょべちょになってるので登らずに撤退するとのこと。
大洞穴 |
私はみもせずに登るつもり。準備しながらちょっと見てみる。まぁ濡れてる。普段から濡れてるらしいのでまぁ変わらんやろとか思う。出だしに紫のカムが残置されているのが見えた。
5P目:がんちゃん、35m。べっちょべちょに濡れているが絶望的というほどでもない。といっても5.9のピッチだ。体感.5.10aとかになってしまうのだろうか。
下半分は乾いてるところがないようだ。クラックグローブを装着しいざ出陣。結構辛いが残置無視、ノーテンションを目指して必死に頑張る。時折グローブのマジックテープが外れ緩んだりするが、口でどうにかしたりして締め直す。割と新しいウェアをドロドロにしたくないので裾をまくった。
5P目 |
下半分はカムを#0.4、#2、0.75の順に割と短めの間隔で入れる。足も手も滑る滑る。俺のギャグの比じゃない。乗越でキツイと喘ぎながら気合いでいく。なみえどんはA0(#0.75)したらしい。息を整えながら灌木にアルヌン。その上に#4をぶち込んでメンタルを回復させた。
そこから左側のクラックを登って行く。ここもしんどい。ハンドジャムを色々決めてみるが右クラックグローブがずれるずれる。なおすなおす。
ここで#3の登場!!しかしうまく決まらないので#2に選手交代。#3お前はもう少し待っていろ。この辺りは左側のフェイスのスタンスを上手く拾っていくといいかもしれない。#2を上にお散歩させる。左手が結構キテる。振る。兎に角振ってレスト。
ここで#3の登場。後は気合でぐっと登ると楽になる。ああ、登れた。。。と思ったらまだクラックセクションが。カムが残りもう少ない。私のようにビッグなサイズももうない。愛ラブ灌木で支点を取ってからの#2を突っ込む。1段上がって#2にも1段上がってもらう。さらにもう1段上がって#2にももう一段上がってもらう。
使えそうなカムが無くなってくる。#1をガン開きで引っ掛けておく。あれ、#1って全開で引っ掛けていいんだっけ?と思いながら上に#2を突っ込む。もうマイクロサイズしか残ってない。#2を一旦回収してさらに上に突っ込んでみたがわちゃわちゃして後で落ちてしまった。テヘペロ。後は階段を少し登り左手にある残置ハーケン3つで終了点。ロープがクソ重い。
5P目終了点 |
そして福本がかなりキテるようでにっちもさっちもいかず、ナノトラクションを発動した。リードより時間掛かってますよ奥さん。
6P目:がんちゃん、25m。凹角はとりあえず#3→#1→#4を突っ込む。問題はここからの右トラバース。ひたすら濡れている。
6P目全景 |
びちょ濡れトラバース |
何とか意を決して乗り込むがひたすらに悪い。上がり過ぎないように注意。じわりじわりと全面濡れた壁をトラバース、なんとか極限状態で#1を途中で決める。
ここからのトラバース |
トラバース一歩踏み出すのが怖い |
この先で上にいくのだが右往左往する。右か左か、色々試してみるがヌメヌメだしプロテクションがとれそうにない。なんとかピナクルにスリングを掛けるが安心できない。そのピナクルの裏に因縁のカム#3を突っ込む。バチ効き。こいつが後々の・・・。
#3 |
結局数十分格闘しただろうか。手が限界に近い。しかし行くしかない。色々やってみて左の方からなら上がれそうだが手が悪い。限界はもうとっくに来ている。#3でテンションかけてもらいレスト。何度かトライするが怖くてなかなか踏ん切りがつかない。時間も迫っている。集中。深呼吸して気合いを入れる。一気に立ち上がって叫びながら乗り込む。マジでギリギリ。その先にあるかもわからないホールドを取りに行く。あった。いけた。叫んだ。
福本はもう限界だっただろう。なんとかかんとか引き上げる。
7P目:スラブを直上、50m、ロープを一旦解除して壁に突き当たるまで歩く。
このスラブを突き当りまで直上 |
8P目:がんちゃん、50m。草付きを右にトラバースしていく。周りは既に暗い。ヘッデンクライミングの始まり始まり土曜ロードショー。草付きのルンゼらしきものがあったのでピッチを切る。
9P目:がんちゃん、60m。出だしのクラックは簡単。草付きのルンゼを感で登って行く。クラックがどれか分からない。変なとこに入ってると思うがクラックぽいしいいやろって感じ。しかも脆かったりする。50mぐらいでピークに出れるだろうと思ったがどうもそうはいかない。限界までロープを出してもらい60mいっぱいでピークの藪灌木へ。終わった。安堵。
よく分からない藪などをかき分けピッケルのあるピークへ。
やはり私は山頂まで抜けるルートが好きだ。尚且つオールナチュプロのフリー、楽しい以外の何物でもない。これこそアルパインだと思う。残置ハーケンを使うことはあるがなるべく使わないでおきたい。残置カムなんてもってのほかである!!(どっちでもいいと思うが)
ピッケルピークと私 |
デプローチ
下降は例のピッケルを横目に、南尾根を経て牧南沢を下降するのがいい。踏み跡やテープは割とあるが、ヘッデンだとルーファイ核心か。時折偽踏み跡っぽい感じのとこに入り込んだりしてたいへんだった。下山は北尾根を経て2100mコルからクリヤ谷でもいいかもしれない。特にヘッデンだと。
疲労感は以外と無く、眠くも無かった(途中で寝てたけど)。下山は1時49分頃だった。ほぼ19時間行動となった。
因縁のカム#3メンバーについて(ただの余談です)
ちなみに冒頭にちらっと書いている因縁のカム#3メンバーとは、とある槍西稜の際になみえどんが「カム#3を使うから持って行って!ガイドが言うてた!!」とムラっちに言ったのだ。
純粋なムラっちは真に受けて持ってきたのだが(クソ重くて嵩張るのに)、私はそんなものはいらない!!アルパインやぞ!!と一蹴し、絶対に使わないぞという強い意志でハーネスのケツ部分にぶら下げ結局誰も最後まで使わなかったため、ただの重りとなった。という一連の騒動の事である。
これ以来、我々(がんちゃん、ムラッチ、なみえどん、かなちゃん)の間では事あるごとにカム#3をネタにしているのであった。ちなみになみえどんとかなちゃんで行った滝谷バットレス中央稜では使用せず、ただの重りになったらしい。
#余談
翌日は小川山だったが雨。アプローチしてキャンプしただけ。あのELLをやろうと思っていたのだが。。。そう、ELLには見張り塔が・・・。
よかったらYoutube(がんちゃんねる)も見てね。
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