[アイスクライミング]大峰 弥山川クルミ谷右俣 裏双門ルンゼ 裏双門滝 初登 2025/1/13

2025/01/14

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大峰 クルミ谷右俣-裏双門ルンゼの大滝初登

2024年7月、顔を濡らしながらその滝を仰いだ。


水量はそれほど多くはないが、ずっしりと迫力があり、滝の強さが伝わってくる。岩壁に囲まれたその場所で、ああこれは冬になったら氷瀑になりアイスクライミングができるんじゃないか?と思った。


ぶったってて、えぐれてる岩壁は凄くバーチカルになり、難しそうだ。そう思いつつも心のどこかで何かワクワクするものを感じていた。


登れなくても、その氷瀑を見るだけできっと何か得られるものがあるんじゃなかろうかなんてことは全く思わず、登ってこそだというのが私のポリシー。

双門の滝のアイスクライミングは2023年にやった。第2登の話は聞いていないが。。。次は裏双門の大滝か。

そんなことを思いながら、ダイソンにこの話をし、心のなかで温めていた。気温は低くなって欲しいが。情熱はいつも沸点に達している。


そして2024年のクリスマス、全世界規模でサンタクロースが過労で倒れるなか、フックジョーさんの記録でその滝がボチボチ凍り始めていることを知る。遠望したその氷柱はまだ下まで繋がっておらず到底登れそうにないが、年末の寒波や年始の寒波で繋がればアイスクライミングができるのではないか。期待と不安が入り混じりながらも全身でその瞬間を迎える覚悟ができていた。


そして2025年1月の頭、全世界規模かは分からないが全国的にジジババの財布の中身が寒くなっていた。私も姪っ子にお年玉をあげた。ああ、今年は良く冷えるなぁ。

寒気が入るという情報に歓喜し、今回のメンバーへと喚起し、1月13日にソレを決行することとなった。残念ながらダイソンとは日程があわず彼は当日こられなかったが、双門アイスのメンバーの一人であった福本とツヨツヨ橋本さんの3人で登攀することとなった。


1月10日。ダイソンが単独偵察に向かう。特段依頼したわけでもないが、彼はまた彼自信の情熱によって目の前の前衛滝まで偵察に行ったようだ。そこから大滝を撮影した写真と動画を説明付きで送ってくれた。また、各区間のラッセル状況や時間も詳細に記録してくれたおかげで行程が組みやすくなった。助かる。


動画で見たところ、氷瀑はしっかりしており離陸部分は残念ながら見えないが、そこそこの太さもあり恐らく下まで繋がっていて十分登攀可能であるように見える。落ち口が若干薄いような感じもするが、岩の裏側に回って抜けられそうな感じでもある(ダイソン談)。


最悪そこから懸垂は十分可能そうだし上に抜けるのもいけそうだ。ありがとうダイソン。今回も入念に偵察してくれて(当日参加できないのに)圧倒的感謝である。双門氷瀑登攀をこなせるのは毎回彼のおかげである。ワクワクする。あとは下までしっかり繋がってることを祈るばかりである。


後日、懸垂ポイントの参考にどうぞと以前ダイソンが訪れた際の滝の落ち口の写真と動画が送られてきた。お主は神か?

山行概要

日程:2025年1月13日

天気:晴れ時々曇り、登攀開始時0℃

山行形態:アイスクライミング

メンバー:がんちゃん、橋本さん、フクモト(主に撮影)、ダイソン(事前偵察)

主な共同装備:ハーフロープ50mx2、アイススクリュー13本とちょっと。


駐車地

熊渡に駐車(5~6台程度駐車可能)。登山ポストあり。トイレなし。

山行詳細

アプローチ

6時8分、熊渡駐車地からスタート。一般ルートをハイキングする登山客だろうか。既に2台ほど車が停まっていた。

当然のごとく双門ルートにトレースはない、そう思っていたのだが、うっすらと、うーーーっすらと数日前の踏み跡が残っていた。

その名はダイソン、彼のトレースだ。そのトレースに導かれ進んで行った。

冬の静かな私の心のように蒼く透き通った釜滝は綺麗だった。イワナの姿は見当たらない。焼き魚を食べたいな。

釜滝

なんだかんだゆっくり行ってたこともあり、一の滝が見える吊り橋に8時半到着。2時間の予定が2時間20分ほどかかってしまった。

夏道は歩いたことがあるのに雪化粧したその道は分かりにくく、クルミ谷の入り口付近ではGPSがちょっと狂って右往左往してしまい時間を食った。

途中でキジを発見し戯れる。

10時7分、4時間かかって前衛滝に到着。

大滝が見えた

そこでギア準備と補給を済ませ右岸側から今回対峙する滝の滝つぼへと上がった。うっすら雪の下はスラブ岩でちょっと悪く、上がるのに思ったよりも時間がかかった。

裏双門滝:約70m

1ピッチ目:橋本さん、25m、WI5-

私は2ピッチ目のバーチカルをリードしたかったので1ピッチ目を譲る。

11時15分登攀開始。

出だしは左側の3mほどのバーチカルから右に回り込む。右に曲がり込んだ後は階段状に見えるので簡単かと思いきや意外と悪いようでモヨモヨしてる。

1ピッチ目登りにくそう

氷は硬くも柔らかくもなく、程よい感じではあるが、ちょっと脆かったり薄かったり、そもそもデコボコ階段状なのでプロテクションが取りにくいようだ。橋本さんはそういったところが苦手なようでなかなか高度が上がらない。

確かにバーチカルでの安定度は段違いで私より遥かに上手いが、ちょっとアルパインチックなのとかプロテクションが悪い感じなどは私の方が得意なようだ。アルパインで突っ込めるかどうかみたいなところがあるのだろう。

そんなこんなでウダウダ言ってあまりにも弱気になっているような気がしたので叱咤激励を施し登ってもらう。

最悪プレイヤーチェンジしてもいいし、私ならサクサク行けそうな感じのピッチだわ。
と思いながらも、次のバーチカルピッチを考えると温存しておきたい気持ちの方が上だった。は、早く登り切ってくれー。
1ピッチ目中盤

たくさんの氷の礫が降り注ぐなか、ダウンを着こみビレイしてる上でモヨモヨと3回ほどのアックステンションを交えながらジワジワと登って行く。首が痛くなってきた。まだ30代なのに四十肩は勘弁だと思いながらカッチカチの氷をよけ続けた。

1時間半ほど経過したころ、なんとかテラスのようなところに辿り付きピッチを切った。ホッ。

1ピッチ目テラスに到着

さてとさてとフォローの番だ。みんなの命の糧を入れたザックを一つ背負い12時55分スターティン。

バーチカルは出だしと終盤にちょろっとなのでパンプすることは無いが、階段状はフォローで登っても確かに悪いというか気持ち悪い。
ムーブが難しいわけではないが、やはりアックスの打ちどころであったりプロテクションであったりが難しく感じた。ああ、これは素直なアイスクライマーはウダウダいうわ、といった感じである(ここでナミエどんを思い出したのは内緒にしておこう)。

スクリューは1本だけ残し他はすべて回収した。なぜ全部回収しないのかって?
フォローで登る福本の練習のためにも1本残したのだ。それもバーチカル部分に。
経験の浅い彼がスクリュー回収で時間がかかるのは分かっていたし、それでパンパンプオブチキンになってしまっても大変だろう。
そんな私の飴と鞭を感じ取ってくれたらいいと思う。

13時25分、全員が集合した。

たどりついた終了点は少し狭く、当然のごとくハンギングを強いられる。
結局、福本はこれ以上登るのはキツイという自己申告でロワーダウン。撮影に徹する事となった。

1ピッチ目集合

といっても昨シーズンもほとんどアイスはしていないはずだし、今シーズンもアイス始めだがなぜか上手くなっていた。フリークライミングやボルダリングを頑張っている恩恵だろう。

2ピッチ目:がんちゃん、45m、WI5

まずはバーチカル区間が目測で20m程度か。

ドキドキする。ちょっと弱くになるも気合を入れる。技術的には辛くても登れるはずだ。
落ち着いてちゃんとレストしながら登ればいい。

13時50分ごろ、登攀開始。

バーチカルは得意なわけでは無いし怖いけれど、今日は登れる気がする。
登りながら、ああ、アックスの振りが上手くないぁ、もうちょっとこう、腰を。。足を。。。とか思うぐらいの余裕はあった。そんな余裕があるのに基本の登りができていない。ダメダメである。

2ピッチ目出だし

決して上手くて綺麗な登りでないことは本人が一番分かっているが調子は悪くない。順調に登れている。

ハンドルを握らないように意識しながらバージンアイスを叩く。

5mほど上がる。バージン相手にハァハァいってるがいつものことだ。
レストを挟みなが腰あたりに確実にスクリューを決める。
右手のバイルを振りかざす。左手で持ち換えて右手をふりふりレスト。

次の瞬間、腰にきめていたはずのブルーアイスの黄色いスクリューが私の頭上にいた。

左上に残置された1本のアックス。もう一本のアックスは左手に握っていた。

右手でアックスをきめたと思っていたそのバージンアイスはまあるくヒビが入っており、私の侵入を拒んだのだ。

フォールした。

1フォール。悔しかった。きつかったわけではない。
ただ、ただただ不注意で、その穢れ無き氷を傷つけてしまい、拒まれたのだ。
悔しさの感情が口から白い湯気となって出ていた。

空也上人像の波阿弥陀仏とは違う薄汚れた言葉だっただろうか。

しっかりと氷と対話し、確認すべきだったのだ。

気を取り直して、しばしレストを挟み、大きく深呼吸して再び登り始める。

一度落ちたので吹っ切れていた。あとはガシガシ登るだけ。
いわゆるオンサイトトライのような緊張感は薄れ、恐怖との闘いはあったが、なんだか身体が軽くなったような気がした。

でもやっぱり怖いのは怖いので、バーチカル区間にはアルミやクロモリの棒を連打していた。パンプしないようにいい感じのレスト姿勢を保つ意識をしながら進む。

20mほどのバーチカルを終えた後も時折あらわれるバーチカル、そして悪い氷。
30mを越えるころにはスクリューの残数が心配になってきたので、節約するために太い氷柱に穴をあけタイオフしたりして節約した。というか足りないのは明白だった。何本持って行ったのかは確認していなかったが。

僕の心と身体は疲れていた。

高度感も相まってバーチカルに対する恐怖も増していただろうか。ラインは自ずと左岸側の岩との間に引き寄せられていった。もちろんプロテクションは取りにくい。

岩でステミングゴーゴーをして登って行った。でもこういうアイスが結構好きだったりする。ピュアではない、どことなく泥臭い登攀。それが私のスタイルなのだろう。

岩でステミングゴーゴー

気づけばスクリューの残りはあと2本。終了点のことを考えると最低1本は残しておきたいがどうみても足りないのである。

ちょいと進んでロープがあと10mのコール。どうやらトップまでも抜けきれそうにない。
テラス状に見えるところをターゲットにする。

結局15m近くを震えながらランナウトし、スクリュー1本で凌いだ。痺れた。

2ピッチ目終了点に到着

テラスに見えたところはかなり怪しく、下から延びて上に繋がっていない不安定そうな氷柱、突起氷柱。

バージンよろしく繊細に愛撫しないと今にも崩壊しそうであった。

左側の次の登攀ラインとなるところの氷がスクリューを打つには良さそうだが、そこに終了点を作ると突起が崩壊した時にスリングもろとも巻き込まれそうなのであきらめた。

氷が薄く岩を叩きそうな場所にアックスを2本ひっかけ、突起に穴をあけタイオフ。3点+右のスラブに見出した氷にうったスクリュー1本で終了点を作った。

氷柱突起

不安でしかない終了点を横目に、フォローはドカ落ちしないでくれよと願いながら、ロープをギンギンに張り引き上げた。

ランナウトはするもの

対岸にも手付かずの氷瀑が聳えていた。あとでフックジョーさんに聞いたら凹角の30mぐらいの滝らしく、懸垂で登り返したとのことだった。じゃあいいか。

16時ごろだった。

谷を詰めればまだ登られていないであろう氷瀑が

ここも大きく楽しそうだ

3ピッチ目:橋本さん、40m、WI4

もう少しでトップアウトだろう。そう思っていた時期が我々にもありました。

僅かなバーチカルの先は見えないがきっと10mとか20mぐらいだろうと思っていた。
トップアウトをリードしたい気持ちは3割ほど。
それなりに疲れていたし、ロープの処理など面倒なので時間短縮のために橋本さんにリードをしてもらうことになった。

3ピッチ目

バーチカルの先はちょい悪い感じではあるがこれまでの2ピッチに比べて屁でもなかった。
ロープはぐんぐんのび40m、「セルフ解除」のコールが聞こえた。

そんなことしたら落ちてしまわないかい?と思い、分かっていたが聞き返して、ようやく本日最後の「ビレイ解除」のコールを受け取った。

福本謹製エーデルリッド風ロープバッグが大活躍

Vスレで戻る予定なのでロープアップの最中に、穴をあけ、セルフ用のスクリューとスリングなどを残しておいた。いそいそとフォローで登り、滝の落ち口へと到達した。

滝の落ち口

感動的だ。
ここが裏双門の滝の落ち口か。

終了点から先をみた。

3ピッチ、ロープスケール110m。
滝の大きさ自体は70mほどであった。

橋本さんと拳を突き合わせ、すぐさま懸垂ポイントを探し準備する。

デプローチ

事前にダイソンから凡その情報を聞いており、懸垂に使えそうな木があることは分かっていた。案の定その木があった。助かる。

登り始める際にヘッデンはいらないだろうと残置ザックに置いてきたが3回目の懸垂であたりは冷たい闇に包まれていた。
結局スマホのライトを頼りにVスレを作り、懸垂3回で取りつきに降り立った。

福本は4時間以上待たせてしまったが元気そうだ。よかった。

21時1分。行動14時間53分。

熊渡に到着。興奮冷めやらぬまま車に飛び乗った。

完走した感想

勝手に?裏双門大滝と呼称しているがいいのかはわからない。しかし、裏双門ルンゼの中では一番の大滝であろうし、問題ないだろう。

兎に角、依頼したわけではないが事前偵察までしてくれたダイソン、ありがとう。いつも彼の弥山川愛には驚かされるばかりである。

下山して真っ先にダイソン報告したが(どうだったかの報告を催促するLINEがきてたが)
、まるで自分が登ったかのように興奮していた。それがたまらなく嬉しかった。

これは4人で成し遂げた山行だ。

ありがとうございました

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初登と思われるが既に登られているという情報があれば教えていただきたい。

裏双門大滝 約70m 全景

以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。

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